なぜハーバード大学サンデル教授の講義は白熱するのか?(2/2 ページ)

» 2010年11月04日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!
前のページへ 1|2       

良いプレゼンほど質疑応答が盛り上がる

 真っ先に手をあげたり、質問にすぐ答えたがる生徒にろくな意見はない。自分の言いたいことを意見するだけで、「考える」に値しない。むしろ、とまどい、躊躇し、自信なげな生徒の意見に、その場を白熱させる意見があるという・・・。これって、実際の企業の会議などでに当てはめてみても正しいっ。

 昔から言いたかったことが正義ではなく、いま考えたこと、考えているプロセスに正義はある。クリアカットされた言葉に発見はなく、今考えてつむぎ出された言葉にこそ発見がある。白熱教室で交わされる意見や言葉は、その場で生み出されたものである。その場で発見された言葉が行き交うから、白熱するのだ。

 プレゼンでも同じことである。成功するプレゼンには1つの法則がある。それは、良いプレゼンほど、プレゼン後の質疑応答時間が盛り上がるということである。プレゼンのストーリーにはない質疑で、どんな言葉や意見を自分の中で発見できるか。その手応えがあればあるほど、プレゼンは白熱し、成功確率は高くなる。企業の会議でも、毎回手を挙げて発言する輩の意見よりも、真面目な社員のつぶやくような意見の方が役に立つことが多々ある。

 意見を言いたい人たちの意見を拾う方が、一見、会議は白熱しそうだが……そこに生まれてくるのは「どちらが正しいか」という議論である。そこに、新しい発見は生まれず、ごり押しがまかり通る。正しい者の混迷がいちばんやっかいである。だから、私たちが一番賢いと考えている官僚が紡いだ言葉を繰り返し、ごり押しする国会には正義はない。哲学はない。

 大きな声で手を挙げた輩が偉いという風潮。ずっと手を挙げ続けている輩が国家の代表になる風習。そんなものが時代遅れであることを、マイケル・サンデル教授の白熱教室は教えてくれている。(中村修治)

 →中村修治氏のバックナンバー

前のページへ 1|2       

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.