コラム
» 2010年11月01日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:持たざる強みが企業や個人を強くする (1/2)

企業経営において、工場や人材などを多く抱えてしまうと、選択肢が狭まり、機動力にも欠けてしまうため、ベストな経営が行えない可能性があると主張するちきりんさん。そしてそれは、ビジネスだけではなく、個人にも当てはまるといいます。

[ちきりん,Business Media 誠]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん(Twitter:@InsideCHIKIRIN)。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2006年6月27日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 “持てる”者と“持たざる”者とは貧富の差を表す古典的な言い回しですが、ビジネスの世界では“持たざる者の強み”もよく言われます。

 例えば、組み立て系製造業では、世界各地に立派な工場を保有するメーカーと、自社工場を持たない企業が併存します。しかし、工場を持つ企業が有利かといえば、そうとも限りません。

 後者の企業は自社工場がないからこそ、作る商品に合わせて「この商品を最も高い品質で、最も安く作ってくれる工場はどこか?」という視点で、製造委託先を世界中の工場から選べるからです。自社工場を持っていると、たとえコストや生産性が少々劣っていても、その設備を遊ばせておいて海外他企業の工場に仕事を委託するのは、とても難しい判断となります。

 人材についても同じです。余剰なほどの解雇できない正社員を抱えていれば、新規事業や海外事業に乗り出す時にも、自然と社内から責任者を選ぼうとしますよね。

 一方、抱えている人材が少なければ、新規事業を始めるに当たって、その分野で指揮を執るにふさわしい人を世界中から募集することが可能になります。こういった差は時に事業の明暗を分けかねません。

 かって“ナショナルのお店”を全国津々浦々に「持ってしまっていた」パナソニックも、家電量販店や大手小売りチェーンとの良好な関係を築くのにほかのメーカーより苦労しました。大量販売と引き替えに要求される大幅な卸値のディスカウント要求をのめば、系列販売店をつぶしてしまうことは目に見えていたからです。

 過去においては、大躍進の原動力の1つであった大規模な販売店網という“超優良な資産”が、時代が変われば成長の障害になるという、なんとも皮肉な話です。

 そして、持たざる者の強みを生かすために、企業は「わざわざ持っているものを捨てる」という選択をすることもあります。

 例えば、工場を分社化すれば、開発部門から見て自社工場は「ほかの会社」となります。その上で「この商品をどこの工場で製造するかは、技術力や価格などの条件で決めますよ」と、自社工場と他社工場を比較検討するわけです。

 結果的に自社工場で作ることになるとしても、自社工場も世界のほかの工場との競争を余儀なくされます。もともとは一流企業の工場だったのですが、“世界との競争”にさらされることになるのです。

 このようにビジネスの世界では、「持ってしまうリスク」はあらゆる分野において認識されており、今やバランスシートを大きくしたいと考えている企業は少数派となりつつあります。もちろん、多くの企業は「終身雇用を約束させられてしまう正社員を持ってしまうことのリスク」も十分に理解しているからこそ、新卒採用の拡大に慎重になっているとも言えるでしょう。

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