プレミアムロールケーキはどのように作っているのか郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2010年10月28日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

どうやって作るのか?

 「おいしい!」と感嘆しつつも疑問に思ったことがある。渦を巻いていないロールケーキ、しかも中心部にたっぷりの生クリーム。どうやってカットしているのだろう? 

 パッケージを開けると、薄くカットされたケーキが樹脂カップに横たわっている。ロールケーキが縦置きでなく、横になっているということが新鮮。たっぷりの生クリーム部にかかるビニールを取る。スポンジには1カ所継ぎ目が見える。このクリーム量で巻いているのだろうか? スプーンですくって食べる。食べ終わるとギザギザのカップが残る。ロールケーキに付き物のスポンジのカバーではない。はがすものではないのだ。どうやって作るのか? 料理研究家のcherryさんにぶつけた。

 「冷凍クリームに焼いた生地を巻き付けてカットしているのでは?」というのが彼女の答え。

知見を重ねた開発

デザート開発のキーマン・柳田欣浩さん

 「実は冷凍も検討しましたが、解凍時に離水するのでダメでした」――。

 ローソンのベーカリーとデザートのキーマンである柳田欣浩さん(商品・物流本部ベーカリーデザート部長)が答えてくれた。生クリームを冷凍すると、解凍時に分離・離水して風味が落ちるのだ。また製造プロセスをPC画面で見せてくれたが、なんと手づくりだった。

 「スタートはケーキ屋クオリティのデザートを作りたいと思ったことからです」(柳田さん)

 その発想とは本格的な生クリームにしっとりスポンジ。素材も製造も本格的なコンビニスイーツを作るコンセプトが、たっぷりクリームをスプーンで食べるロールケーキになった。だが、製造は苦労の連続だった。

 まずスポンジ。デザート界で一流と言われる製粉所に「良いものを作りたい」と頼み込み、ケーキ屋さん御用達の小麦粉「宝笠印」の供給を受けた。でも材料が良いだけではダメ。配合やハンドリングなど製造プロセス全体にアドバイスをもらいながら、しっとり感を追求した。

 もう1つはケーキ専門店の生クリーム。コンビニのスイーツといえば植物性脂肪を想像するが、それを乳脂肪――つまり生クリームにするのは配合と調味をうまく組み合わせなければいけない。日持ち・品質保持・賞味期限という制約からの大きな挑戦だった。そして味を決めるのは調合だけではない。絞り出し工程で泡立て過ぎると、空気が入り離水が起きる。植物性脂肪なら使えるスクリュー絞り出しが使えない。良い品質を維持するためには手絞りしかなかった。

 生産工程では板状に焼いたスポンジを細くカットし、手で樹脂ケースに1本1本入れる。真ん中に生クリームを手で絞り出し、ビニールシートをかぶせ、最後は包装して出荷。ケーキ屋さんクオリティで150円なのは、全国8工場での手づくり大量生産ゆえである。

 「開発で知見を重ねたからこそできたんです」と柳田さんは振り返る。

細くカットされたスポンジの中に、生クリームを詰めていく

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