「Twitterは中国に100%自由な言論空間を与えた」――トップツイーター安替氏の視点(2/7 ページ)

» 2010年10月26日 11時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

中国でTwitterが流行した理由

安替 どうしてTwitterにはそういった力があるのか。

 Twitterは1つのツイートに、最長140字まで書き込むことができます。英語だと20ワードくらいしか書けないのですが、中国語や日本語だと伝えられる内容が(漢字などがあるために)英語の3倍くらいになります。つまり、英語で3つのツイートで語っていたものを、中国語や日本語では1つのツイートで語れるという強みがあるわけです。中国語では少ない言葉数で物事を伝えることができるため、中国のTwitterでは、1つのツイートの中に個人の名前と情報とコメントとリンクを一緒に組み込んで流すということが特徴になっています。

 そういう風に利用していくことで、同じような立場に立って同じような考えを持っている人たちとつながりやすくなるという特徴がTwitterにはあると思います。自分が持っている意見を、他人の同様の意見に加える形でツイートするうちに、同じような意見を持つ世界中の人たちとつながれます。

 TwitterはAPIをオープンにしています。そのため、Twitter公式サイトにアクセスしなくても、第三者が作ったアプリケーションを通じてTwitterは利用できます。中国政府はTwitter公式サイトへのアクセスをブロックしてはいるのですが、携帯アプリケーションやPCアプリケーションなど、Twitterを利用するための方法がさまざまあるので、中国でもTwitterを使えるというわけです。

 こうした第三者が作ったアプリケーションを使っている中国のTwitterアクティブユーザーは10万人ほどいます。中国政府は2009年7月にTwitter公式サイトへのアクセスをブロックしたのですが、アプリケーションを使ったり、商業的なVPNサービスを使って利用しているユーザーは、ここ1年でとても増えています。

 また、Twitterでは、フォローとアンフォローが自由にできます。つまり、ある人をフォローして「面白くない」と思ったら、その人をフォローするのをやめることも自由にできるわけです。その結果、面白いことが起こっています。

 中国のインターネットには“五毛党”と呼ばれる人たちがいて、政府に雇われてインターネット世論を左右させたり、政府を賛美したりするような書き込みをしています。中国の通貨の0.5元のことを5毛と呼ぶのですが、つまり「政府を賛美する文章を1つ書き込むことによって、政府から5毛程度もらって活動する奴ら」という意味で、インターネットユーザーは政府の支持をする連中を五毛党と呼んでいます。

 五毛党がTwitterに出現した時、Twitterユーザーたちは興味を持ち、五毛党の人たちが何を書き込むか見たわけです。しかし、書き込みを見て「ああ、こいつが言っていることは大したことないな」と思って、みんな簡単にアンフォローしてしまいました。五毛党たちはどんなに自分の言論を広めたくても、誰もフォローしてくれなければ、自分の言論を読んでくれる人はいないわけです。そのため、五毛党はフォローとアンフォローが自由なTwitterでは生き残れない、という現象が起こっています。

 ハッシュタグの機能も重要です。自分のツイートにハッシュタグを付けて書き込めば、そのハッシュタグで検索をかけた時に、そのハッシュタグを付けたいろんな人のツイートが自分のツイートも含めて表示されます。これをうまく使えるのが社会運動です。何らかの社会運動が起こった時、気持ちを1つにする人たちが1つのハッシュタグを使ってつぶやいたことを、誰かが読み直したい、またメディアの人がどんな発言がなされたのかを調べたいという時に、ハッシュタグで検索すればどんな人がどういう発言をしているのかが一挙に出てくるわけです。

 中国には「twibase.com」というサービスがあります。これは中国語を使ってツイートする人たちの影響力を、GoogleのPageRankの手法を使ってランキング化したものです。

 1位はアモイに住むコラムニストの連岳(レンガク、@lianyue)さん、2位は中国語のツイートを収集してリツイートするBOT(@rtmeme)、3位は芸術家の艾未未(アイ・ウェイウェイ、@aiww)さん、そして4位に僕が入っています。

twibase.com

 このランキングは中国語でツイートする人たちの影響力を表しているのですが、22位に日本人の蒼井そら(@aoi_sola)さんが入っています。

 中国のTwitterユーザーは蒼井そらさんに非常に感謝しています。なぜなら彼女の出現によって中国のTwitterユーザーが3倍に増えたんですね。それまでは2万人くらいと思われていたTwitterのアクティブユーザー数が、5万人を軽く超えました。そのため、ほとんどの人が蒼井さんにとても感謝しているのです。彼女の作品を見たことがある人はそんなにいないかもしれないですが。

 そして、2010年7月に青海省の玉樹で大地震が起こったのですが、その時彼女がすぐさまTwitterを通じて、募金を呼びかけてくださいました。それを見た時、僕たち中国人Twitterユーザーたちは彼女に感謝し、感動しました。その日から彼女は僕たちの女神さまになりました。

 蒼井さんのフォロワー数は12万人ほどですが、恐らくその半分は中国人のはずです。蒼井さんをフォローしている中国人のほとんどは、日本語ができない人のはずです。しかし、蒼井さんが日本語でツイートする合い間に、中国語や英語を使ってツイートしてくれるのを楽しみにしてフォローしている人がたくさんいます。

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