忘れてはいけない、“原発のゴミ”問題藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2010年10月25日 07時39分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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放射能のリスク

 この処分事業にあたっているのは、原子力発電環境整備機構(略称NUMO)だが、処分施設建設の可能性を調査するために、全国の市町村から「公募」をしている。2007年に高知県東洋町が調査受け入れを表明して、町民から受け入れ反対運動が起き、当時の橋本高知県知事などが反対を表明して大騒ぎになったのは記憶に新しい。

 結局、町長がリコールされ、文献調査(地質的に埋設処分に適しているかどうかの初期調査)にも至らなかった。それ以降、応募した自治体はない。

 現在の国の計画では、これから数年以内に精密調査する候補地を選定し、10年以上かけて最終処分施設建設地を選定、さらに10年かけて最終処分を開始することになっている。しかし「核のゴミ」に対する拒否反応の強さから見て、果たして応募する自治体が出てくるのかどうか。最終処分計画は遅れる可能性が非常に大きいということになりそうだ。

 それでも「核のゴミ」をいつまでも最終処分せずに置いておくことができるわけではない。現在、日本には約1700本のガラス固化体が保管されている。そしてそれぞれの発電所には使用済み核燃料がプールなどに保管されている。これらの燃料は再処理のためにやがて青森県の六ヶ所村に送られるが、そうなったら1本500キロの核のゴミを固めたガラス固化体が大量に発生するという。NUMOの試算によると、2009年末までに発生した使用済み核燃料をすべて再処理したとすると約2万3100本のガラス固化体が発生し、それ以降の発生分と合わせて2021年ごろには約4万本になるとされている。

 それでも最終処分としての地層処分で、本当に高レベル放射性廃棄物を閉じ込めることができるのかどうか。火山と地震の国である日本に安全な地下などあるのだろうか、というのが素朴な疑問である。日本原子力研究開発機構が地層処分の安全性を確認する研究を、北海道幌延と岐阜県瑞浪で行っている。その1つ、瑞浪で専門家の説明を聞く機会があった。そこである程度納得できたことは、日本でも何十万年も変化していない地層があり、そこに埋設することによって、放射能のリスクを遮断することができるということである。ガラス固化体を厚さ20センチの鉄容器に入れ、さらにその周囲を厚さ70センチの水を通しにくい粘土で固めるのだという。

放射性物質を閉じ込めれば安全なのか

 もっとも1000年の間、本当に放射性物質を閉じ込めて実害のないレベルにできるのかどうか、実験などで確かめることはできない。しかし一方で、われわれが電気を使うことによって核のゴミは発生する。今年は電気自動車元年、自動車さえも電気を使う時代が始まった。CO2を排出しなくなる一方で、核のゴミを「排出」するということでもある。

 われわれの生活にゴミはつきもの。そして出したゴミは何とかして処分しなければならない。核のゴミは誰も引き受けたがらないのだが、将来にわたって科学的に管理されるという意味では、どこかの山中に違法に捨てられる産廃よりはよほど安全と言えるかもしれないのである。

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