コラム
» 2010年10月21日 08時00分 UPDATE

なぜ法律事務所のテレビCMは、うさん臭いのか (1/2)

テレビをつけていると、法律事務所のCMを見ることが多くなった。「借金で払いすぎた金利を取り戻します」といったことを言っているが、なぜ法律事務所のCMはうさんくさく感じるのだろうか。その理由を考えてみた。

[中村修治,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:

中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 先月、消費者金融大手の武富士が会社更生法の適用を東京地裁に申請した。負債額は約4336億円。過払い金の未請求分を含めると1兆円規模に達するそうだ。そんなニュースの裏では、法律事務所のテレビCMがいっぱい流れている。

 アコムは「むじんくん」、武富士は「エンむすび」、レイクは「ひとりででき太」、アイフルは「お自動さん」、プロミスは「いらっしゃいましーん」。いまとなっては懐かしい響きすらある。こんな無人契約機のテレビCMを消費者金融各社がこぞって放映していたのは、1995年ころの話である。そんなマス広告の効果もあって、サラ金やクレジット会社のカードローンなどから借りたことがある人は、ピーク時には2000万人。成人の約5人に1人がお世話になるまでに拡大したと言われている。

 現在でもその数は、1400万人。そのうち返済困難な多重債務者は200〜300万人。合計貸出額は25〜30兆円と試算されており、利息制限法(金利15.18〜20%)と出資法(29.2%)の2つの法律が存在したお陰で生まれた差額が過払い金で、それが大きな市場を形成した。その額は10兆円にのぼると言われ、そこに目をつけ盛んに広告を打っているのが多重債務整理を得意とするところの法律事務所なわけである。

ジェットストリームアタック

 機動戦士ガンダムに登場する黒い三連星が使用した攻撃フォーメーションに「ジェットストリームアタック」というのがある。

 パチンコのCM→消費者金融のCM→法律事務所のCM――。

 これって、弱い消費者を食い物にする「ジェットストリームアタック」みたいなものではないか。完璧なフォーメーションである。消費者金融を悪と定義して、法の名の下に多重債務者から上前をはねる。2006年の最高裁判決で、グレーゾーン金利が違法とされた結果の焼け太りである。

 資本主義社会なのだから、過払い金10兆円に群がるマーケットができるのは仕方ないと言われればそれまでなのだが、法律事務所が消費者を食い物にする「ジェットストリームアタック」のフォーメーションの1つになることはどうも合点がいかない。

 日弁連は、10年後には法曹人口5万人をめざしているらしい。その1つに、司法試験を新制度が改訂された。合格率が毎年3%の狭き門は一挙に開かれ、毎年1000人程度だった合格者は、ここ数年2000人を超えている。

 弁護士人口が増えたら→競争原理が働き→安くて質の高い弁護士が増えるというロジックらしい。しかし日本人の文化体質的に、これから訴訟件数が極端に増えるとは思えない。確実な市場が見えない中での、法曹人口の急増は「事件漁り」をする弁護士を増やしはしないだろうか。過払い金市場に群がる法律事務所のテレビCMからは、そんないびつな法曹界が透けて見えてくる。

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