銅の精錬で栄えた島に「家プロジェクト」:瀬戸内国際芸術祭(2/3 ページ)

» 2010年10月18日 13時56分 公開
[草野恵子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

 この不思議なギャップ。「家プロジェクト」の魅力は、美術館やギャラリーといった特別な場所ではなく、のどかな家々が並ぶ島の日常風景と、そこにアートが一緒に存在するという点。建築を手がけた妹島氏は「風景を見ているのか、アートを見ているのか、人々の生活を見ているのか――そういうものが立体的に経験できるものを目指した」と語っているが、まさにそれを外側からも内側からも存分に体感できるのがF邸である。

 電飾の日の丸は水をたたえた底面に反射し、揺らめきながら点滅を続ける。日本家屋の両翼には、塀の内側が鏡になった不思議な形の坪庭がある。外からでは分からないので、ぜひ坪庭にも足を踏み入れてみてほしい。

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 その次にたどり着くのが、S邸「蜘蛛の網の庭」(2010年)だ。全体が透明のアクリルでできており、道に沿って美しい弧を描いている。中には繊細なレースが掲げられており、まずその美しさに注意がいく。

エキサイトイズム S邸「蜘蛛の網の庭」(2010年)柳幸典 設計:妹島和世

 その次に、そのレースがところどころ不規則に破れていて、何本かの矢が突き刺さっていることに気づく。

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 そして、レースの中心付近にたどり着くと、そこにドル札の柄が精巧に編み込まれているのを目にする。この作品は、2008年のリーマンショックなどに象徴される金融資本主義が崩壊していく様子をあらわしたもの。柳氏の作品としては女性的な作品だが、同時に強いメッセージを放っている。建物の中には本物のクモが放たれている。

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