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» 2010年10月13日 08時00分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:シャープ「ガラパゴス」に見る、日本製品の未来 (1/2)

高度化する消費者のニーズに応えたため、世界市場でシェアを落とし続けている日本製品。「ガラパゴス」と揶揄されてきたが、しかし、ここにきて風向きが変わり始めている。和魂洋才ともいうべき、新たな進化を見せ始めているのだ。

[金森努,GLOBIS.JP]
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それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2010年10月8日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 家電やITの国際見本市「CEATEC JAPAN2010」が10月5日に幕張メッセで開幕したが、日本勢の電子書籍端末やスマートフォンが実に面白い動きを見せている。

 電子書籍の配信からスタートする、シャープのクラウド事業「GALAPAGOS(ガラパゴス)」の専用端末。商品名が「自虐的」とも揶揄(やゆ)されるが、シャープは広報の発表で、「常に新鮮なユーザー体験をもたらすサービスと端末の「進化」の象徴として、イギリスの地質学者・生物学者のチャールズ・ダーウィンの「進化論」で有名なガラパゴス諸島に由来している」と発表している。

 だが、ネーミングに込められた想いはもっと深そうだ。2010年10月9日付週刊東洋経済の記事「『ガラパゴス』に託したシャープ、変革への野心」の中で、同社の片山幹雄社長は「日本製品の先行きに多くが悲観的になっているが、そこへのアンチテーゼの意味を込めた」と語っている。DiginfoがニュースをYouTubeにアップしているので、見てみてほしい。

シャープ、電子書籍端末「GALAPAGOS」を発表 : DigInfo

 ネーミングに関してはネット上で賛否両論が渦巻き、Twitter上ではかつてのシャープのキャッチフレーズ「目の付け所がシャープでしょ」をもじって、「目の付け所がガラパゴス」ともツイート(つぶやき)されていたが、言い得て妙というか、それこそがこの商品の本質を突いている。ガラパゴス島の生物は、島の外来種に必死に対抗して生きている。外来種とはアップルのことに他ならない。

 シリーズには2つのサイズが用意されていて、5.5インチの「モバイルタイプ」と10.8インチの「ホームタイプ」である。アップルのiPadは9.7インチと持ち歩くには大きく、かといって、3.5インチのiPhoneのサイズではちょっと(筆者の年代では非常に)つらい。5.5インチのモバイルタイプは、いってみれば、文庫本サイズともいうべき大きさで、混んだ日本の通勤電車で使用するにはもってこい。狭い島国の地の利を生かした展開であると言えるだろう。

 コンテンツの配信方式も、驚くべき提携が発表された。10月5日付の日本経済新聞の記事「シャープ・CCC提携 TSUTAYAのノウハウ活用 電子書籍や映画20万点」。

 記事によれば、両者は合弁会社を11月にシャープ49%、CCC51%出資して設立。ガラパゴス向けに、まず12月から電子書籍3万冊を、来年3月以降マンガ、映像、音楽、ゲームなど配信を拡大するとある。

 米国ではコンテンツ配信はアップルがアップルストアで独占支配している。その陰で、米国最大のレンタルビデオチェーン、ブロックバスターがレンタル需要の落ち込みで、9月22日にニューヨークの連邦破産裁判所に連邦破産法第11章(チャプター11)の適用申請をした。シャープとCCCの提携は米国と極めて好対照であるといえるだろう。

 前掲の東洋経済の記事の中で、シャープの片山社長は、「電子書籍を皮切りに、今後はハードとサービスが融合したビジネスを会社の軸にしたい」と語っている。アップルの垂直統合型モデルを意識しているのは間違いない。

 日本人は元来、外部のものを取り入れて、自国の文化や思想・技術と融合させるのが得意である。岡倉天心は「和魂洋才」的な発想で、伝統的な精神を忘れずに西洋の文化を学び、調和を図れと説いた。また、聖徳太子も憲法十七条で、「和を以て貴しとなす」と説いた。「カドを立てるな」と誤読されがちな言葉だが、本来は、派閥・党派に偏らず、互いに睦まじく話し合いをして合意すれば、道理にかないものごとが成しとげられるようになるという意味だ。

 シャープのガラパゴスは、アップルの端末を日本の事情に合わせて最適化しつつ、メディア配信の覇権を握るのではなく、相互メリットのある提携関係を構築して市場を拡大しようという動きであると読み取れる。極めて、良き日本的な展開であると言えるだろう。

 一方、より南の絶海の孤島「ガラパゴス島」的な展開を見せているのがスマートフォンだ。

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