1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
9月、政府・日銀が約6年半ぶりに円売り・ドル買いの市場介入に踏み切った(参照リンク)。急激な円高進行に歯止めをかけるための措置だったことは多くの読者がご存じの通り。だが、一連の情報を伝えたメディアの体制はどうだっただろうか。かつて通信社の外為市況番を長らく務めた筆者の視点から振り返ってみる。
9月30日、財務省は同月の円買い・ドル売りの市場介入実績を発表した。その額は2兆1249億円に達した。
円相場が重要な節目とされた1ドル=82円台を突破する寸前、9月15日のことだ。政府・日銀は電子取引システムを通じ、先に記した額と同程度の規模で円高阻止に動き、野田財務相もこれを認めた。ここまでは大手メディアを通じて報じられたので、ご記憶の向きも多いはず。
翌日以降、政府・日銀が公式に介入を認めたことはない。しかし複数のメディアはこの間何度も「介入があったもよう」「大口のドル売り注文が入り、介入との観測が根強い」などと伝えた。
筆者がなにを言いたいかと言えば、政府・日銀が公式に介入を認めて以降の一連の報道は、“かなりインチキ臭い”ということなのだ。
外為市場では、さまざまな投資家・投機家が存在する。今般のように介入の有無が微妙なタイミングでは、介入と見せかけるような売買手口を使うディーラーやファンド勢が少なくないのだ。
市場が疑心暗鬼に陥っているのを逆手に取り、大口のドル買い注文をぶつけるわけだ。当然、プロのディーラーでさえ浮き足だつ。彼らをフォローしていたメディアも狼狽し、必死に裏取りに走る。最終的に、記者の元には上司であるデスクから矢のような催促が入るのは言うまでもない。
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