澄田 たいていの古本屋は店売りだけではなく、古書交換会(市場)※や通販、デパートの即売会など、さまざまな手段を組み合わせて成り立っています。
市場がどのようなものかというと、東京古書組合の市場は年間で30億円ほどの出来高になっています。市場の値段の2倍くらいが店頭での売り値になるとすると、60億円で最終的に販売されることになります。これを東京古書組合に加盟している600の業者で分けると、1業者当たり1000万円。売り上げの何割が利益になるかは店によってかなり違いますが、2割とすれば200万円、3割とすれば300万円が市場を通じた店主の年間収入になります。実際は東京の市場に地方の業者も来ますし、東京の業者が他県に買いに行くこともできるので、こんな簡単な計算にはならないと思いますが、要するに「平均的な業者は市場で仕入れるだけでは生活できない」と言いたいわけです。
市場に出品する側についても見てみましょう。30億円の出来高があるということは、30億円分の出品を誰かがしているということです。こちらも仕入れの2倍程度で出品している、つまり出来高の半額が利益になっていると考えると15億円の利益、1業者当たりにすると250万円の利益になります。両方合わせると500万円前後の収入となります。これでやっと食べていける金額になりますね。
私がなぜいきなりこういう話から始めたかというと、セミプロのせどり※がたくさんいる世の中で、プロの古書店を目指すのなら、どうしても経営規模に注目せざるを得ないからです。ある程度の規模があって初めて、流通にかかるコストを下げていくことができます。
例えば、宅配便を使って通販をするにしても、月に100個しか出さないなら定価でやるしかないでしょう。しかし、1000個出すなら、交渉して安い価格で配達してもらうことができます。また、人が出張して仕入れをする場合、どうしても交通費や人件費などのお金がかかります。たくさんの冊数や金額を買わないと見合わないです。
本に関する知識を豊富に持っていても、実際に多くの本を取り扱えなければ何の役にも立たない。取り扱い量が少なければ、知識や技術を積み上げることもできません。
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