ビジョンや行動規範では足りない! “物語”が会社を強くする(1/2 ページ)

» 2010年10月05日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


内田樹著『日本辺境論』

 内田樹著『日本辺境論』では、「日本人、日本という国は、常に“きょろきょろ”している。自分がどうあるべきかということよりも、他との比較が気になり、他との比較でしか論じることができない。また日本人は、モノを決めるときにはその論理性でも明らかさでもなく空気が重要である、相互に分かり合ってさえいればほとんど合理性のないことでも、その決定に合意できる。学ぶべき見本が常に外部にあり、正解を常に外部に求め、相対的にどうかという思考しかできず、自ら標準を設定することができない」などとあります(さわりだけを大ざっぱに言えば……です)。

 すでに似たような指摘がなされていることでもありますが、その通りだろうと改めて感じます。きょろきょろしている政治家を批判するメディアも、何を軸として述べているのか不明なきょろきょろ具合で、発表資料や世論調査を頼りにするしか術を持たない。「他社はどうした」「一般的にはどうなっている」と聞くばかりの経営者。ガイドブックやノウハウ本が売れるのも同じでしょう。

 内田樹さんは、「これはもう日本として、日本人として仕方がない、どうしようもないのだからこれを強みとして生き方を模索するしかないのだ」という立場をとっておられます。

 その理由は、日本には初期設定がないから。「そもそも、何のためにこの国を作ったのか」というものがない。理念に基づいて作られた国ではない。「かつての米国人がそうであったように振る舞うことで、米国人が米国人たりうる」といったような継承された規範がないからだ、と。そうなのかもしれません。

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