“効率”の世界から、“効果”の世界へちきりんの“社会派”で行こう!(2/3 ページ)

» 2010年10月04日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

効率の世界は楽しくない

 しかし、高効率だけを追求する世界は、生身の人間にとって必ずしも楽しい世界ではありません。人は食べるのに困らなくなれば、“効率は悪くても楽しい世界”を求めるようになります。

 実際、高度経済成長が一定の水準に達したバブル期には、日本の独自文化を求める機運が高まりました。けれど、その萌芽はバブル崩壊後、「そんなふわふわしたことを言っていてはだめ」という形で否定され表舞台から姿を消します。そのため日本での独自性の発露は、サブカルチャーという形で“マイナー層の趣味”として扱われることになります。

 アニメもキャラクターもJポップも世界で話題となり、ポケモンやキティちゃんなどその一部はビジネスとしても大成功しました。でも、日本の経済をけん引する“経団連企業”のお歴々は、単純労働を担う移民政策の実施を求めるなど、いまだに“効率で勝つ”ための方法ばかりを考えているかに見えます。

 大企業の多くは「世界で差別化できる付加価値の高い商品を開発したい」と口では言いながら、「他人と異なる考えを持っている人」「一般的でないキャリアを積んできた人」を組織から排除するという矛盾に満ちた行動をとっているのです。

 その一方で、画一的な組織に馴染めない人たちが、世界に通用するかもしれないアイデアを“仲間内の楽しみ”として自分たちだけで消費しているのは本当にもったいない限りです。

 企業が本当に“付加価値の高い商品やサービス”を開発したいなら、追求すべきは効率ではなく効果です。そして、効果のキーワードは“多様性”です。

 男性だけでなく女性、中高年だけでなくシニアや若手、サラリーマンだけではなく回り道をした人や経済活動をしてこなかった人(主婦など)、健常な人だけでなくさまざまなハンデを背負った人、人生には仕事しかないという人だけでなく生活の中で仕事以外の部分に優先順位を持つ人、ずっと日本で育った人だけでなくいろんな国で育った人……。

 そういう多様な人の考えがぶつかり合うところにこそ新しい考え方が醸成され、新しいコンセプトが生まれます。これは効率のために画一性を求める世界とは180度異なります。

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