“効率”の世界から、“効果”の世界へちきりんの“社会派”で行こう!(1/3 ページ)

» 2010年10月04日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん(Twitter:@InsideCHIKIRIN)。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年5月23日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 これから日本全体が変わっていかなければならない方向性をひと言で言えば、「効率の世界から効果の世界へ」という転換だとちきりんは考えています。

 効率とは「単位時間当たり、できるだけ多くのモノを作ること」であり、サービスを例にすると「単位時間当たり、できるだけ多くの量をさばくこと」です。“効率的な人”とは1時間に1つではなく10個の案件を処理できる人で、“効率的な工場”とは1時間に100個ではなく1000個の商品を作ることができる工場のことを指します。ビジネスにおいて効率の高さは、コスト競争力に直結します。

 一方、効果はまったく違う概念です。iPodやYouTubeのような商品・サービスは、効率ではなく効果の側から生み出されました。「早く、大量に」ではなく、「新たに独自の価値があるものを生み出すこと」が効果です。今までとはまったく異なる薬理作用を利用して、高い治療成果が出る薬が発見(創薬)されれば、それも効果側の話です。

 戦後、日本の産業界は、その効率の高さで世界の頂点を目指しました。圧倒的に歩留まり※が高く、生産性の高い工場が生み出す商品が世界を席巻し、日本の通貨は世界で通用する価値を持つに至ったのです。

※歩留まり……生産されたすべての製品に対する、不良品でない製品の割合。

 効率の世界のキーワードは“画一性”です。足並み一つずれることなく、同じように動けるロボットのような人間、同じモノを見れば、まったく同じコトを考える人間が効率性追求のためには必要です。

 多くの人は、感覚的、経験的に「いろんな人がいるとややこしい」ということを知っていますよね。多様な人がいると“あうん”の呼吸が通じず、お互いを理解するのにも時間がかかります。何をやるにも「なぜそう思うの?」と問う必要があります。多様性は効率化の邪魔になるのです。

 日本が効率で世界トップの地位を確立できた背景には、もともと民族や言語の画一性が高いという特徴と、中央集権的な体制の下で全国一斉に同質の教育を広めることに成功したという点があげられます。また、さらに高効率を目指すために「他人と違うのは良くないことだ」「みんなと同じように考え、みんなと同じように行動するべきだ」というプレッシャーも、あちこちの環境でかけられてきたのです。

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