わこ 『ハート・ロッカー』は英雄、『シャッターアイランド』は犯罪者だからね。凶悪犯の精神病患者を収容する施設の「シャッターアイランド」で脱走事件が起こる。
佐々 で、連邦保安官のテディが相棒のチャックと一緒に島に捜査にくるんだけど、何だかおかしな雰囲気になっちゃうのな。
わこ 陰謀に巻き込まれて島から出られなくなっちゃうとか、お約束な展開だけどね。1950年代の犯罪者専用の精神病院で、人体実験が行われているとか、元ナチの医者が紛れ込んでるとか、その手の展開はありがちといえばありがち。まだ第二次世界大戦終結からさほど時間が経ってない時代の薄暗さが、ゴシックホラーな雰囲気を演出してていい感じ。
佐々 で、そのうち「お前のそれは妄想だよ」っていわれ始めて、周りが敵だらけのなか果たしてテディは正気を保てるのか!? 的なのも、お約束といえばお約束。
わこ 途中でだんだん読めてくるんだけど、その読みがどこまで当たってるのかどうか、それが気になって最後まで一気に見ちゃうタイプの映画だね。個人的にはディカプリオの眉間のしわがだんだん大御所の域に近づいてるな、と気になって気になって(笑)
佐々 わしはワタナベケンがいつ出てくるのか気になって気になって。
わこ それ映画が違うから! ワタナベケンが出てくるのは『インセプション』だからっ!
佐々 だって、どっちもデカプー主演で、妄想だか夢だか現実だかがごちゃまぜになる話でしょ? どっちも結局どうなった? 正気なのはどっち? いまは現実? みたいなさ。
わこ 乱暴なくくりだなー、スコセッシとノーランごっちゃにするなんて、年寄りの映画ファンにあるまじき暴挙だろ!
佐々 あ、しまった。スコセッシの眉毛に怒られちゃうな。あんな若造と一緒にするな! って。
わこ でもねー、死んだ妻の幻に悩まされる展開とデカプーの眉間のしわ演技は同じような感じでしたよね。
佐々 死んだ妻の幻はこっちのほうが怖かったけどな。いつもびしょぬれだし、時々燃えてるし。
わこ 妙に派手なアロハ柄のワンピースもなんだか怖いのね。デカプーのネクタイの趣味といい、微妙にダサい感じなのよ、奥さん。
佐々 ああいうちょっとダサめな感じの女が男を追い詰めたっていうのがリアルに怖いよな。テディがビョーキになってもしょうがないよ。妻を殺した犯人を追ってシャッターアイランドに来たテディ、どこまで正気を保てるのか、っていうか元々病んでるのか。
わこ 『ハート・ロッカー』と『シャッターアイランド』、とりあえずどっちもビョーキだとして、テディはビョーキになってもしょうがない不幸なことがあるんだけど、ジェームズ軍曹はビョーキになってもしょうがない状況にはない、ってあたりが全然違うところだなあ。
佐々 だってジェームズは戦場にいるけど、まったく不幸じゃない、むしろ楽しんでる男。テディは日常にいるはずなのにどうにも不幸な男。
わこ どっちがいいかは別にして、よりビョーキっぽいのはやっぱりジェームズかな。爆死するまで治らない病。
佐々 爆死するまで……か、主観的に見たらジェームズの人生は結構いい人生なのかもな。
映画好きが高じて、コラムを書いたりもするイラストレーター。『WOWOWマガジン』『問題小説』『てぃんくる』などでイラストコラムを執筆。『Tokai Walker』の金子裕子さんのコラム「セレブ診療所」にコマ漫画を付けている。過去には『DVD&ビデオでーた』でビデオレビューのイラストコラム、『DVDでーた』で記者会見をレポするコラム『現場から櫻井輪子でした』を連載。
著書に『「へのへのもへじ」から始める 世界一カンタン! イラスト練習帳』がある。公式サイト「SakuraiWako'sめカラうりぼう」。
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