お客を引き付ける“店長力”の秘密郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2010年09月30日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「マーケティング・ブレイン」(コンサル業)、「cotoba」(執筆業)。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go


 あなたには“行きつけのお店”があるだろうか?

 居酒屋でもカフェでもレストランでも、美容室やブティックでも「あの店長がいるから」リピートする。そんなお店があるだろう。

 店長の魅力って何なのだろう?

 そんな疑問を持って、昼間から赤坂、そして新宿へハシゴして“店長力”を探った。良いキモチになった。お酒で酔っちゃいない。2人の女性店長のお話に酔ったのだ。酔いがさめないうちにお伝えしよう。

名前のある常連さんを作る

 「店長になったら何をしたいと思いました?」

 「カジュアルダイニング KICHIRI 赤坂」の店長、田代香織さんに尋ねた。

 「“常連さん”ではなくて、お客さま1人1人のお名前を覚えます」

「カジュアルダイニング KICHIRI 赤坂」の店長、田代香織さん

 田代さんは4年前に株式会社きちりに入社し、2009年4月に赤坂店の店長となった。その時、改めて赤坂という街を見渡した。渋谷や新宿と違って人が集まる場所ではない。ここで生活し、仕事をする人が多い。“常連さん”を大切にしよう。

 そう気付いて、ホテルのドアマンのようにお客さまの“心のドア”を開き、美容室で女性が自分をさらけだすように“気持ちよく語る”おもてなしを心がけた。やさしい眼差しの奧で「もっとこうしたら喜んでいただける、楽しんでもらえる」をいつも考えている。何人のお客さまの名前を覚えているのか。

 「ちょっと前に書き出したら30人以上でした。今では50人弱くらい」

 「どうやって覚えるんですか?」

 「お座りになったお席、お顔を覚え、お話をうかがいます」

 いつも手にする革の手帖に、顔と名前のある常連さんが詰まっている。

人に感動する

 田代さんの店長力はスタッフにも及ぶ。彼女は状況次第でキッチンにも立ち(サラダからデザートまですべてこなす)、ホールと調理場のスタッフの壁のない1つの店を目指す。アルバイトにも「何をしたいか」を定期的に聞いて、こんな助言もする。

 「自信を持って、立ち向かいなさい」

 人は不安な人から買わない。自信を持って「これがいい」と勧める人から買う。だからスタッフには人間力を磨いてほしい。「人にふれあい、人に感謝し、人に感動する」と書かれたKICHIRIのクレドカードを出しながら、エピソードを語った。

 「母の日に家族で食事にいらしたお客さまがいました。その家族の温かい姿に感動して、もらい泣きしたアルバイトの男の子がいたんです。お客さまも感動されて、私も感動してしまって……」

 ふれあい、感謝まではしつけだ。でも、感動は人間性だ。そのシーンを創るのは店長力なのである。

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