コラム
» 2010年09月27日 07時05分 UPDATE

藤田正美の時事日想:中国が“拡張主義”に走れば……日本はどう対応すればいいのか (1/2)

尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐり、日本政府が揺れている。レアアースの輸出差し止め、大手ゼネコン社員の拘束、謝罪と賠償といった中国の圧力に対し、日本はどのように対応すればいいのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 尖閣諸島近海で操業していた中国漁船と日本の海上保安庁巡視艇が衝突した事件。勇ましく中国人船長を逮捕したまではよかったが(実際、逮捕するまでに政府部内で検討した結果の逮捕である)、後は中国側が圧力を高め、結局は処分保留のまま釈放してしまった。

 しかも、あろうことか、検察が国際情勢を勘案して釈放を決定したという説明である。外交の専門家でもない検察がそう決定して、政権はそれを受け入れたということだ。これはどう考えてもおかしな話だ。そもそも外交というとりわけ政治的な課題を検察の決定に任せたというのが解せない。民主党の売り文句「政治主導」はどこに行ったのだろう。小沢前幹事長ではないが、菅内閣はやはり「官僚主導内閣」になってしまったのだろうか。

 →にわかに雲行き怪しい日中関係

一歩間違えば領土的野心に

 検察にとっても迷惑な話だったと思う。逮捕自体も政治的に決断をして、国内法で粛々と処理すると言ったのだから、そうすればよかった。粛々と処理した結果、不起訴にすることもあるだろうし、起訴することもあるだろう(今回は処分保留というあいまいな形だったが)。処分をどうするにせよ、これだけ中国が反発しているのだから、本来、総理大臣の承諾が必要なはずだ。だからどちらにしても決定にいたった経緯を仙石官房長官がその決断を説明すべきだった。それをせずに結局、検察に責任が押しつけられてしまった。こうなると菅首相の“逃げ”にしか見えない。

 今回、中国の圧力の高め方は異様だったと思う。丹羽大使を何回も呼び出し、しかも一度は休日の深夜である(常識外れの時間に呼び出すことによって中国側の決意の固さを表明しようというのだろうが、礼儀も何もあったものではない)。さらに閣僚級の交流の一時停止とか、中国に招待した学生をキャンセルするとか、レアアースの輸出を「差し止める」といったことまであった。さらに日本の大手ゼネコンの社員4人、軍事管理地域を無断で撮影したとして拘束するということまでやってのけた。

 もちろんこういったことすべてを中国の中央政府が指示したわけではないと思う。実際、レアアースの件については、輸出差し止めはしていないとしている。しかし中央政府が指示しようがしまいが、中国という国は政治問題が起こればすぐにビジネスにも影響する国であるということが明らかになったのである。その意味で、ビジネスの正当なルールが無視されがちな国ということになる。

 これはいわゆる“カントリーリスク”である。インドは、新興国経済として中国に比べるとまだはるか後方にいる。しかし米国のブッシュ前大統領が言ったように「インドは世界最大の民主主義国」だ。民主主義国ではビジネスのルールを変えるにも、その手続きが必要であり、それは透明でなければならない。どのようにしてルールが変わるのか分からなければ企業は予測しようもないし、対処のしようもない(中国で汚職が横行している理由の1つはここにある)。

 それともう1つ。温家宝首相がニューヨークで「領土問題では一切譲歩しない」と言い切った。尖閣諸島は中国が譲歩するとかしないとかいう問題ではないが、これが21世紀の世界第2位の経済大国なのかと思うほど、「野心」満々である。要するに、13億人の民を食べさせるために、食糧とさまざまな資源が必要であることは理解できる。しかしそれは一歩間違えば領土的野心になりかねない。実際、中国海軍増強の1つの狙いは、中東やアフリカと中国を結ぶシーレーン防衛のためであると軍首脳も語っている。そして「防衛」は「侵攻」につながる面を持っていることを忘れてはなるまい。中国がことあるごとに「覇権を求めない」と言っても、南沙諸島などで中国との領有権争いを抱える東南アジア諸国が安心しきれないのはこのためだ。

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