第39鉄 夏の青春18きっぷ旅(3)SLだけじゃない! 魅力満載の大井川鐵道杉山淳一の+R Style(2/7 ページ)

» 2010年09月24日 22時30分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 リクライニングシートに座り、大きな窓から眺めると、ふだんの通勤とは景色が違って見える。横浜を過ぎれば緑が増えて、茅ヶ崎あたりから左の車窓に海が見え始める。いまは夏だから明るいけれど、冬ならまだ真っ暗な時間だ。この列車に冬に乗ると、ちょうど根府川駅あたりで水平線からの日の出を眺められる。今日はすでに高くなった太陽が、空と水面から照りつけている。カーテンを閉める人も多い。

 晴れていれば、沼津駅付近から右手に富士山が見えるはず。今日は空気がかすんでいて、かすかに山頂が見える程度だ。沼津駅は2022年までに高架化されるというから、その時はもっとよく見えるかもしれない。富士川を渡れば、この列車の終点、静岡までもう一息である。窓辺に並べた飲み物やお菓子を片づけよう……と、ちょっと待った。いま、もう1つ忘れてはいけない景色がある。東静岡駅の手前、車窓右手に注目。2011年3月27日まで、等身大ガンダムが見える。新幹線から見るとほんの一瞬だけど(参照記事)、各駅停車からはよく見えた。

根府川付近からの眺め
富士山は霞んでいた
東静岡駅付近の車窓からガンダムが見えた

 静岡で各駅停車を乗り継ぐ。大井川鐵道が接続する金谷駅は8つめ。その金谷駅の手前で大井川を渡る。「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と馬子唄に詠われた難所である。車窓から眺めれば水量は少なく、着物の裾をまくり上げれば渡れそうな気がするけれど、それは上流にダムができた後の現代人の感想だろう。川幅は広く、すこしでも水量が多ければ足を取られたはずだ。

「越すに越されぬ大井川」も、鉄橋で渡れば一瞬

元近鉄特急で始める大井川鐵道の旅

 大井川鐵道のSL列車は金谷駅を10時02分に発車する。いまは9時30分。つまり、東京から始発の静岡行きに乗ると、大井川鐵道のSL列車にちょうど良いというわけだ。さっそく大井川鐵道の窓口で「大井川自由キップ」とSL急行券を購入する。大井川鐵道のSL列車は全車指定席。電話かメールで予約できるけれど、予約なしでも空席があれば当日に指定券を購入できる。空席がない場合は立ち席承知を条件でSL急行券を発行する。これは大井川鐵道の運行本数が少なくて、一般所用客もSL列車できるようにという配慮だろう。1人で行けばたいてい座れそうだけど、グループで行くなら予約がオススメだ。

 SL列車の発車を待つ間、時刻表を眺めていたら、1本前に普通列車があった。大井川鐵道の魅力はSL列車だけではない。普通列車には近鉄、京阪電鉄、南海電鉄を引退した特急列車が使われている。ホームを覗くと、今日は元近鉄特急の16000系だった。関東に住む私にとっては珍しい車両だ。行き先は1つ隣の新金谷駅だった。町から離れたJR金谷駅と、街の中心を結ぶシャトル便らしい。そこで、この電車で新金谷駅に行ってみた。 16000系の室内は近鉄特急時代のまま。リクライニングシートでエアコン完備。花瓶に花が飾られている。大井川鐵道沿線の人々は、こんな列車で通勤や通学できるのだからうらやましい。

大井川鐵道の主力は元近鉄特急電車
これが大井川鐵道の普通列車だ

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