コラム
» 2010年09月24日 08時00分 UPDATE

吉田典史の時事日想:ダマされてはいけない……“対等な労使関係”と言う社長に (1/3)

「ウチの会社は労使関係が対等だ」と言う社長がいるが、この言葉をそのまま信じていいのだろうか。従業員側からすれば“聞こえがいい”かもしれないが、言葉の裏には経営者側の本音があるようだ。

[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 中小企業やベンチャー企業を取材すると、ここ数年、意外な言葉を耳にする。それは、「対等の労使関係」というもの。特にコンサルティング会社に勤務したり、大企業の人事部に長く籍を置いていた40〜50代の経営者が口にする。

 わたしは、この言葉は“うさんくさい”と思っている。労働組合が主張するならば分からないでもないが、経営サイドが「労使の力関係が対等」といった意味合いの言葉を持ち出すわけがないのである。

 実際、中小企業やベンチャー企業の経営者の約8割は取材時にこう話す。「雇うのはわたし。わたしの意向に従わないならば、その社員は辞めるべき」だと。20〜30代の若い経営者も、同じようなことを話す。これが、現実なのだ。

 ところが、人事に精通している経営者たちの一部に、「対等の労使関係」といった言葉を繰り返す人たちがいる。半年ほど前に取材した会社が、その一例といえる。そこは社員数10人前後のコンサルティング会社。経営者は大手小売業の人事部に20年以上勤務し、6年ほど前にこの会社を創業した。

 彼は、自らが経営する会社では「対等の労使関係」になっていると述べた。そしてこのように付け加えた。

 「意識のうえでは、会社と社員が対等になっている。だから、わたしは終身雇用にしないし、年功序列型の賃金制度にもしない。そのような制度にすると、どうしても社員が会社にぶら下がる傾向になる」

 この話の意味を2度ほど確認したが、「時代は変わった」とか「社員の意識が以前とは違う」と繰り返すのみだった。しかしわたしが分からないのは、労使関係が対等になると、終身雇用とか年功序列型の賃金制度にはしなくなるのか、ということ。では、成果主義を導入し、リストラをする会社では、労使関係が対等なのだろうか。

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