タブレット端末で変わる「人と企業」の関係性デジタルPRの仕掛け方(2/2 ページ)

» 2010年09月24日 08時00分 公開
[野崎耕司(ビルコム),ITmedia]
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企業のマーケティングを担うタブレット端末

 タブレット端末を「自社メディア」と位置付けることで、アプリを通じて企業の情報を消費者に届けやすくなる。企業が提供するiPadアプリについて、国内外の最新事例を紹介しよう。

 海外企業のiPadアプリでは、メルセデスベンツのブランドマガジン「Mercedesmagazine」が秀逸だ。アプリを起動すると映画の予告編のような動画が流れ、車種のコンセプトや同社のアフリカでの社会貢献活動などが高品質な動画と写真で紹介される。のべ54ページのコンテンツだ。iPad上で表現できるクリエイティブを活用し、ブランドの世界観を表現している。ブランディングツールとしての企業アプリの手本となる例だ。

Mercedesmagazineのイメージ Mercedesmagazineのイメージ

 企業アプリは販売促進ツールにもなる。雑誌コンテンツを提供するクリニーク ラボラトリーズのiPadアプリ「Smile」が代表例だ。雑誌コンテンツの横にはEC(電子商取引)ボタンが付いており、利用者は商品をその場で購入できる。マーケティングの一連の流れである「認知」「理解」「購買」をiPadアプリ上で完結させているのが特徴だ。

Smile Smile

 このようにタブレット端末に対応したアプリは、企業のマーケティングやプロモーション活動を補完する。例えばiPadアプリはソーシャルメディアとの連携に優れており、利用者の感想や体験を口コミとして波及させやすい。ユーザーIDを取得して利用者に応じた情報を提供したり、アプリの更新を知らせる「プッシュ通知」でリピート利用を促したりすることもできる。

 タブレット端末の代表格であるiPadは、マーケティングに適した条件を兼ね備えた端末といえる。

デジタル時代の企業コミュニケーション

 最後に、少し先のデジタルコミュニケーションについてお話したい。米Appleは9月1日(現地時間)に新型「Apple TV」を発表した。PCやMac内のコンテンツに加え、Netflix(会員登録が必要)、YouTube、Flickrのコンテンツをテレビにストリーミングできるほか、映画とテレビ番組のレンタルサービスが利用可能になるという。米Googleは今秋から、Webをテレビ画面で利用できる「Google TV」を米国で立ち上げると発表した。

 これらのサービスは、既存のマスメディアだけでなく、企業や個人を含め、誰もがテレビ番組を提供できる時代の到来を感じさせる。インターネット接続環境を整備すれば、コンテンツの配信や収益化ができるようになる。接触時間の長いテレビがデジタル化することで、企業はそれをiTunesのようなコンテンツ配信プラットフォームとして活用し、自社コンテンツを配信できるのだ。

 消費者はテレビを見ながら物を調べ、その場で気に入った商品を購入することもできる。企業の商品やサービス担当者とテレビ越しに会話ができるようになるかもしれない。夢のような話が、実は眼前に迫ってきている。


 企業が消費者と直接接触する機会は増えていく。大事なのは、デジタルPRの鍵を握る「コンテンツ発想」を持つことだ。それは、練り上げたコンテンツを自社メディアとして展開し、ソーシャルメディアで話題を作り、マスメディアを活用してスタートアップ時の集客を増やしていくことを指す。デジタル時代の企業コミュニケーションには、トリプルメディアの活用が不可欠になることは間違いなさそうだ。

著者プロフィール:野崎耕司(のざき こうじ)

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ビルコム タッチパッド端末事業部ディレクター。宮城大学大学院事業構想研究科卒。2006年1月ビルコムに入社し、コンサルティング、不動産、Webサービス、出版などの業界でB2B、B2Cを対象としたPRコンサルティングを経験。2009年1月よりブランディング、マーケティング活動に従事。デジタルツールを駆使したマーケティングプランニングに精通しており、共著に『Twitterマーケティング』(インプレスジャパン)がある。2010年6月よりタッチパッド端末事業部ディレクターに就任し、「iPadブランドマガジン」をはじめとするタッチパッド端末事業の商品開発から営業/制作までを一貫して統括している。


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