福武ハウス 2010に気鋭の現代作家：瀬戸内国際芸術祭（2/3 ページ）

[上條桂子，エキサイトイズム]

　ニューヨークのジェームス・コーハン・ギャラリーが出品したのは大御所ビデオアーティスト、ビル・ヴィオラの作品「トランスフィギュレーション」（2007）と「ヘレナ」（2008）。

　ビル・ヴィオラは、1970年代後半から活躍しているビデオアートの第一人者である。2006年末に森美術館で大規模な展覧会が行われたのをご存じの方も多いだろう。今回の作品では、ザーッと画面いっぱいに滝のような水が降ってきておりその向こうにシルエットの人がいる、モノクロの映像でさらに滝の向こうにいる人など年齢も性別も分からない。

　対象がスローモーションで前進してきて、しばらくするとようやくボーイッシュでスレンダーな1人の女性であることに気付く。最初に上から落ちてくる水はカーテンのような役割を果たし、その後少しずつレンズとなって奥の対象を映し出し、対象が水をまとうことで輪郭がぼやけ、最後に真相が明かされるのだ。

　高松市美術館が協力をしている森村泰昌氏の「動く電気服2010（田中敦子のために）」。9月5日までに開催された「森村泰昌モリエンナーレ　まねぶ美術史」との連動企画で展示されたものだ。

　田中敦子氏はこの電気服を作ったアーティストで、制作年は1956年（1986年に再制作された）。無数の電球と管球（細長い電球）を張り巡らせ洋服を作った。

　スカイ・ザ・バスハウスからは石川直樹氏の「島は、山」のインスタレーション。石川氏といえば、現在では写真家・著述家としての活動の方が有名になっている感もあるが、セブンサミットの最年少記録を持っている冒険家、山男である。

　今回出品したのは、山の写真と島の写真を箱型のアクリルに背中合わせに入れ込んだ写真作品。作家ならではの視点で切り取られた島や山の写真は厳しく、そして美しい。