ちきりん:米国の例を見ると、金持ちは逃げ始めるんですよ。治安の悪い場所は貧乏人に住ませ、金持ちは公共交通機関のつながっていない山の上に豪邸を立てている。将来、日本も米国のような社会になるのか、興味深いところですね。
赤木:菅直人氏が首相になったとき、日産自動車のカルロス・ゴーン氏に対し、文句を言いました。「(ゴーン氏が)リストラをしながら8億円ほどの報酬を手にしているが、とんでもない」と。しかしゴーン氏だけではなく、経団連に属している社長連中も同じ。日本人の社長も、この国がオカシクなれば海外に逃げればいいだけ。
高度経済成長期のとき、日本は企業に社会保障の責任を負わせてしまいました。しかし景気が悪くなって企業がその責任を負えなくなったにもかかわらず、国はその責任を負っていない。また国が社会保障を与えようとしても、「バラマキだ」と批判されてしまう。国は社会保障を与えつつ、経済を円滑にしなければいけないのに、それができなかった。
また一部の人がお金を持ったことで、小さな輪の中でしか経済活動ができなくなってしまった。そうすると、日本経済全体がしぼんでいってしまう。そのまましぼんでいけば、どこかのタイミングで暴動が起きるかもしれない。
ちきりん:歴史的に見て、戦争や疫病での崩壊ではなく、経済が“少しずつ”しぼんでいった国というのは思いつきません。発展途上国にしろ先進国にしろ、国としては少しずつ良くはなっているかもしれませんが、富裕層はさらにお金を蓄えている一方で、貧しい人は生活レベルがあまり変わっていない感じがします。小さな規模で暴動が起きたりしていますが、必ずしも社会を変革するような動きにはなっていない。
日本のように「1億総中流」といった夢を見たあとに、どんどん貧しくなっていくと、どのような社会になるのか興味がありますね。この日本でいったい何が起こるのか。
ちきりん:あと10年経てば、赤木さんは45歳になります。いわゆるロスジェネ世代の真ん中の人が45歳に。そのときにはどのような世の中になっていると思いますか?
赤木:貧しい社会というのは、貧しい中だけでコミュニケーションが成立してしまいます。しかし日本の場合はインターネットを利用して他人とコミュニケーションをとることができます。その一方で、コミュニケーションが近くなれば、格差という嫉妬(しっと)が生まれるでしょう。
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