日本で二大政党制が成立するために必要なものちきりんの“社会派”で行こう!(2/3 ページ)

» 2010年09月20日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

日本ではどんな対立点がありうるか

 では、いくつか対立がありえそうな点を挙げて考えてみましょう。

(1)生まれつきの貴賤

 欧州的な貴族階層は日本には存在しません。日本の元皇族は数が少なすぎるし、権力や経済力も弱すぎて、“皇族VS.平民”という対立は成立しえないでしょう。

(2)学歴の上下

 大学進学率が非常に高く、学歴と経済的なポジションの相関も、英仏や米国に比べて極めてゆるいのがこれまでの日本の特徴でした。超一流大学を出ても博士号を持っていても、「一兵卒からキャリアを積め」と言われる日本のシステムは極めて民主的で、学歴上での“エリート”という区分さえ明確ではありません。

 ただし、この点については、以前に書いたようなゴールドカラー的な人が増え、一方でずっと非正規社員という人も増えてくると、今後は対立構造を形成する可能性もあるでしょう。

(3)経済思想の対立

 社会主義、共産主義は世界的に敗北が確定しており、今さら「右か、左か」という思想対立で政党が2つ並び立つのは不可能でしょう。実際、共産党も社民党も議席は相当少なくなっています。

(4)経済状態の上下

 “一億総中流”と言われた高度成長期の日本では成り立ち得ない対立軸でしたが、経済格差が問題視されることも多くなった今後は、この基準で対立する2つの政党が並存することはありうるでしょう。いわゆる“配分論者”と“経済のパイ拡大論者”の対立です。

(5)国際政治グループの選択

 これもありえますよね。今までは、何だかんだ言っても米国追随以外、現実的に日本が選べる道はありませんでした。東西対立の時代には、米国側に付かないことはそのまま共産主義陣営に入ることを意味していたからです。でも今は違います。米国以外に、アジアも欧州も選択肢として検討できるでしょう。

(6)産業の別

 米国だと、金融とメディアのニューヨーク、ハイテクとバイオのカリフォルニア、自動車のデトロイト、石油のテキサス、エンターテイメント産業のロサンゼルスというように、地域によってキラー産業が異なり、どれも世界的な競争力を持っています。

 すると、「為替が安い方がいいか、高い方がいいか」「保護主義がいいか、自由貿易主義がいいか」などの“産業の対立”がありえて、それぞれを支援する政党が現れます。

 しかし日本では輸出型の組み立て産業(電気・機械、自動車)と、化学など産業材プロセス業のみが抜きん出た国際競争力を持っていて、それらに対抗できるほどの産業は今のところ出てきていません。そのため、産業を二分して対立する2つの政党もまだ成立しそうにありません。

(7)人種の違い

 この点についても、日本ではマイノリティの規模が二大政党を構成するには小さすぎるでしょう。

(8)都市と地方の違い

 今までは「地方の利益を代表する自民党と、都市の利益を代表する革新政党」という対立がありえました。でも、最近はこれも対立軸としては弱くなっています。

 交通と情報と教育が行き届き、地方の人と都会の人の考えはずいぶん交じり合うようになりました。都会の人の多くは地方出身者で、彼らは地方の状況も理解した上で自分の意見を決めています。また、ずっと地方に住んでいる人でも、「こんなところに高速道路は不要」「ダムも要らない」と考える人もたくさんいます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.