コラム
» 2010年09月16日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:ローソンが農園の経営に――“誠実短小”の生鮮物流への挑戦 (1/3)

ローソングループが野菜を安定供給するため、香取市の芝山農園と共同出資で設立した農業生産法人ローソンファーム千葉。「中抜きを廃す」というサプライチェーンの改革のウラにはどんな苦労があるのだろうか。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「マーケティング・ブレイン」(コンサル業)、「cotoba」(執筆業)。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go


 1980年代の日本製造業を支えたテーマは“軽薄短小”、より「軽く」「薄く」「短く」「小さく」だった。そこから四半世紀、低成長時代の食品流通のテーマは“誠実短小”となりそうだ。「誠実」とは嘘をつかないこと、信じ合うこと。「短」は物流時間を短くして鮮度を保つこと、「小」は店舗規模が小さくなり、消費者の必要購買量も小さくなること。

 9月7日、都心から高速道路で1時間半、千葉県香取市に設立されたローソンファーム千葉の農場に訪れた。大きなクルマだと切り返しがキツい農道の先に、3ヘクタール(約3万平方メートル)の農場が広がる。そのうち約2ヘクタールを使う14のビニールハウス、通年収穫する小松菜の顔がいい。

ah_6577S.jpg ローソンファームの収穫作業 撮影:cherryさん

農業生産法人の設立の狙い

 「関東地区のローソンストア100(650店)と野菜の取り扱いのあるローソンプラス(250店)へ、小松菜を明日9月8日より出荷します」と前田淳ローソン執行役員。

 ローソングループでは野菜を安定供給するため、香取市の芝山農園と共同出資で農業生産法人ローソンファーム千葉を設立。小松菜のほか、大根、人参、ほうれん草、スポットで里芋や坊ちゃんかぼちゃ、ネギなども供給する計画で、プレスリリース(参照リンク)には品目ごとに出荷予定が時期別に記載されている。“できたとこ勝負”ではなく、計画事業の顔が見える。

ah_6473S.jpg 篠塚利彦社長(左)、前田淳執行役員(右)

 「都会に住んでいた時、新鮮な野菜が食べられないと感じました」と多くの報道陣の前、緊張して語り出したのは“イケメン農業王子”篠塚利彦さん。彼がローソンファーム千葉の代表取締役を務める。

 父と兄も役員に名を連ねるが、主役は利彦さんとローソンからの出向社員1人、そして農業研修生数人。トラックで収穫物をローソンの物流センターに運ぶのは利彦さんの役目。大きな体育館くらいの50アールのビニールハウス、この約3分の1の面積で育てている小松菜が毎日出荷される。すごいなと思うが、ほかの野菜が軌道に乗っても初年度半期(2010年9月〜2011年2月)で合計150トン。それはローソンの生鮮全体の0.5%〜1%に過ぎない。ローソンでは今後全国7カ所(農政局のある7エリア)にローソンファームを設立して、野菜供給率10%(2000〜3000トン)を目指す。

 ローソンが農家に出資までして直接生産・供給に乗り出すのはなぜなのか? 小松菜の収穫体験まで用意された記者会見で、根掘り葉掘り聞いてみた。

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