検察よ、少し“傲慢”ではないか相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年09月16日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 筆者は処分を聞き、頭に血が上ったことを鮮明に記憶している。処分後しばらくして、筆者は同庁が某大手金融機関に対して実施していた検査の詳細を、同庁の内部資料とともに写真入りで詳細に報道した。出禁処分を逆手に取り、広報担当者に「書くよ」と仁義を切ることさえしなかった。

 取材チームの他の記者も同様に手厳しい記事を連発した。都合の悪い記事を押さえるという一方的なやり方に、チーム全員が猛烈な怒りを覚えたからにほかならない。

小沢一郎前幹事長

地検関係者への依存度

 これが検察本体への取材だとしたらどうだろうか。社会部の検察担当記者から聞いた話によれば「地検、特に特捜部を取材する際には、一切批判的なトーンは無理」だという。

 特捜部がどのような事件、人物をターゲットに定めているかは地検内部から情報を取るしかない。このため、自ずと地検関係者への依存度が増す。すなわち、「リーク情報を引いてこれるか否かが、記者としての評価に直結する」。

 検察側もこうした構図を熟知しているため、「気に入らない報道は片っ端から出入り禁止にすればよい」(検察出身の弁護士)ということになるのだ。大手メディアの記者は、全社中1人だけ記事をかけなくなる「特オチ」を一番恐れる。この心理を巧みに使ったと言い換えることもできる。

 本稿冒頭に記した大阪、東京の両地検特捜部の案件についても、捜査着手までの数週間の間は、「関係筋」「検察幹部」などの情報ソースからもたらされる、つまり特捜部にとって都合の良い情報しか紙面、あるいはテレビのニュースに登場しなかったのだ。

 「リーク依存度」が極めて高い担当社会部記者の心理を操り、これを報道に反映させた。筆者が経験した金融監督庁の事案から、いやもっと以前から同様のメディア対策の手法が取られていたわけだ。

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