中国の書店ではレジ前で「俺のポイントカードを使え」と言われるらしい(1/2 ページ)

» 2010年09月15日 08時00分 公開
[安田英久,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:安田英久(やすだ・ひでひさ)

インプレスビジネスメディアWeb担当者Forum編集長。プログラミングやサーバ、データベースなどの技術系翻訳書や雑誌『インターネットマガジン』などの編集や出版営業を経て、現在、Webサイト「Web担当者Forum」編集長。ビジネスにおけるウェブサイトの企画・構築・運用と、オンラインマーケティングの2軸をテーマにメディアを展開している。


 先日、北京に出張に行った人から聞いた話があります。

 中国の書店では、本を買うためにレジに向かう人がいると、近寄ってきて「この書店のポイントカードを持っているか? 持っていなければ私のを使え。安くなるから」とポイントカードを渡す人がいるというのです。日本から出張で行っている人が書店のポイントカードを持っているわけもなく、安くなるならとポイントカードを借りて5%引きなどで書籍を買い、またポイントカードをその人に返すのです。

 その書店は5フロア5000坪、北京で最大どころかアジア圏で最大級の、日本でいうと丸善のような立派な書店。でも、店員は注意するでもなく放置しているので、そういう人たちがレジ前にたむろしていて、店員よりもそういった人の方が多い場合もあるとのこと。

 さらに言うと、その人たちは書籍を購入するタイプの人ではなく、恐らくそうしてポイントを貯めてステージが上がった会員カードを他人に売っているのではないか、という話です。

 そもそもポイントカードは、その店舗でよく買い物をしてくれる人にお得になるサービスを提供することで、ロイヤルティを高めてもらうための優良顧客に向けたサービス。ところが、初めてその店に行った、恐らく二度と来ないだろう旅行客にロイヤルカスタマー向けの割り引き価格で書籍を購入させ、その購買でポイントを貯めているのは書籍に縁のない人……そして、店員はその状況を放置している。これではマーケティングプログラムの意味がどこまであるのでしょうか。

提供側の思惑から外れる行動をする顧客

 さすがに日本では、コンビニで買い物カゴにお菓子や飲み物を入れてレジに向かう人に「私のポイントカードを使ってくれ」と言う人は見たことがありません。もしいても、少なくともレジ前にたむろしないでしょうし、店員が注意するでしょう。ところが、そこまでひどくないにしても、マーケターの意図したものとは異なる状況がないとは言えません。

・レストランに入って注文して食べ終わってからケータイでその店のクーポンを探す

・ネットショップで会計直前になってからメールマガジンのログを調べてクーポンコードが届いていないか探す

・契約しようと決めているサービスに申し込む直前にアフィリエイトでそのサービスのアフィリエイトプログラムがないか探して自分買いに適用する

 店舗側の本来の目的としては、クーポンは来店促進のためや購買の後押しのために提供しているものですし、アフィリエイトは紹介してくれた人に利益を割り戻すことで通常はリーチしづらい顧客層にも商材を知ってもらえるようにするためのもの。

 しかし、前述のような「企業側のマーケ目的」から外れた行動をする層をゼロにすることはできません。あくまでも「提供側の思惑から外れる行動を顧客がする」だけのことで、不正ではありませんし。

 また、マーケ施策の副作用は、別の形で出ることもあります。レンタルDVD店が来店促進のための割引チケットを会員向けに送付している場合、週末にレンタルDVDを借りようと思っても「どうせ来月になったら半額クーポン送ってくるから、それまで待とう」となり、常に半額でしか借りない人もいるでしょう。ネットショップでも、顧客がセール慣れしていて、特売をしないと売り上げが立たず、常に何らかのセールをしなければいけない状態になってしまうこともあるようです。

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