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» 2010年09月15日 08時00分 UPDATE

マクドナルドと吉野家が狙う“面”と“点” (1/4)

8月の月間全店売上高が過去最高を記録した日本マクドナルド。一方、牛丼戦争において「一人負け」と言われた吉野家は9月7日、新メニューで反撃ののろしを上げた。両社の戦略を比較してみよう。

[金森努,GLOBIS.JP]
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それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2010年9月10日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 2010年9月8日付日本経済新聞に、「日本マクドナルド 8月売上高、最高に 513億円、新商品が好調」という記事が掲載された。同社の原田泳幸社長は記事中のインタビューで、「新製品の投入で新規顧客を取り込み、朝食メニューの値下げなどで次の来店につなげるという複合的なマーケティング戦略が奏功した」と語ったという。さらに注目のポイントは「客単価は下がっておらず、低価格戦略で売り上げを伸ばしているわけではない」と強調した、という点だ。

 インタビューコメントの通り、マクドナルドの戦略は「複合的なマーケティング」がキモなのだ。ただし、それは複雑な手法を駆使しているわけではない。実に基本に忠実なセオリーを愚直に実行している。

 直訳すれば「区分」や「分割」を意味するセグメンテーション。マーケティングにおいては、市場や顧客、自社の製品などをさまざまな切り口で同質なカタマリに区分し、魅力あるカタマリを見つける(=ターゲティング)ために行うことだ。そして、日本マクドナルドの戦略の基本は、セグメンテーション・ターゲティングを緻密に、巧みに行うことなのである。

 マクドナルドのセグメントにはどのようなものがあるだろうか。例えば、「価格」「時間帯」「客層」「商品コンセプト」などさまざまな切り口が考えられる。

 まずは価格。無料のコーヒーに始まり、100円・120円メニュー、200円の朝食セット、復刻版や改良版として定期的に投入される「テリヤキ」や「月見」バーガーなど日本オリジナルメニューの中価格帯商品、クォーターパウンダー、ビッグアメリカキャンペーン商品などの高価格帯メニューなどが対応する。

 次に時間帯。朝マック、ランチタイムのセット、午後のティータイムにはマックカフェ、お一人様向けの簡単な夕食ならチキンメニューなど、時間帯別にもオススメできる対応商品がある。

 客層では、クォーターパウンダーで主にボリューム感を求める若年層を集客し、次にニッポンオールスターキャンペーンで懐かしの復活日本オリジナルメニューで往年のファンを呼び戻す。さらに、自社客のリピートを促進するだけでなく、その合い間に無料コーヒーで新規顧客を集客することにも抜かりがない。

 全外食企業の中では売り上げこそ、すき家を運営するゼンショーに抜かれたものの、日本マクドナルドは押しも押されもせぬリーダー企業である。

 リーダー企業の戦い方の基本は「全方位戦略」だ。しかし、ダメな「全方位」は思いつき、散発的にさまざまなことに手を出す。それに対し、マクドナルドは緻密にセグメントを切り、それをスキマなく、モレ抜けなく「面」を自社の色に塗り込めていくのだ。その戦略と徹底力こそが力の源泉なのである。

 マクドナルドの好調が報じられた翌日、日本経済新聞では、土俵際に追い詰められた吉野家の窮状が伝えられた。8月の牛丼チェーン大手3社の8月の売上高で、ゼンショーは32.3%、松屋は8.0%を前年同月比で伸ばした。一方、吉野家は11.9%減と18カ月連続の前年割れ。

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