何でも“コンペ”にしたがる人の心理(1/2 ページ)

» 2010年09月14日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 民間同士の取引においても、さまざまな業界でコンペが増えているようで、「受注するにはほぼすべてがコンペだ」という業界も少なくないようです。小さな会社が受注するためには……という話ではなく、有名企業や大企業でもコンペに参加しなければいけないことが格段に増えています。

 とはいえ、コンペといっても、実際には提案内容に大差なく、価格に焦点が当たった“あいみつ”(相見積り)みたいなものが多いと思います。それでは、なぜコンペが増えたのか、「コンペにするのが当然だ、常識だ」と思っている人、もしくは習慣や癖のようになっている人が増えたのかを考えてみたいと思います。

コンペが増える2つの理由

 もちろん、「コンペにする(競わせる)ことで、よりいいものが安く買える可能性が高くなる」「色々と見ることで、だまされる可能性が低くなる」ということもあるでしょう。まあ、それがコンペの大義名分です。しかし、ほかに本音(それが無意識であっても)があるように思います。

 1つ目は、発注側担当者の勉強不足やイメージ不足。「自分はどんなことをいくらくらいでやりたいのか」「どのような理想形を描き、何を達成したいのか」が曖昧(あいまい)なまま仕事を進めようとしているので、色々な提案を見てみたくなる。その仕事に関する知識の蓄積や情報収集を怠っているので、さまざまな事例などをたくさん見て、説明してもらわないと決められないという状態になります。つまり、仕事や課題に対する当事者意識や本気度が低下した結果として、コンペが増えたのではないか。

 2つ目は、発注側担当者のアリバイ作り。「ちゃんと比較検討したこと、どこかと特別な関係があるようなことはないことをコンペの実施によって証明したい」という気持ちの表れです。本来の仕事の目的よりも、コンプライアンスの観点を優先してしまっている、成果をあげることよりもプロセスや手続きにおいて抜かりがないことを大切にしているような価値観とも言えるでしょう。さらに、コンペを通して、参加側にお金を払うことなく、さまざまな情報や知恵や役務を得ることができるということもあるかもしれません。

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