次のグラフをみてください。このグラフで追加した緑の点線は、赤い棒グラフのトップラインを「35年」右に動かして(一時期のみ)表示したものです。
ご存じの通り、戦後や30年前に比べて今は、親になる年齢が遅くなっています。結婚も遅くなっているし、それに伴い、第1子を持つ親の年齢も高くなっています。
以前は25歳で親になり始めていたのが、今は下手すると35歳で親になり始める。7年から10年程度、親世代を表す線を右にずらす必要があるわけです。このように、青い線が緑の点線に移行する過程は“晩婚化&親になる年齢の高齢化”を示しています。
こうすると、なぜ2003年ころから急激な少子化が起こるはずなのに、そうなっていないのかが分かります。結婚や出産を先延ばしにしてきた団塊ジュニア世代が、30代半ばでいわば“駆け込み出産”を始めたために、再度起こるはずの急激な少子化傾向が先延ばしされているのです。
しかし、団塊ジュニア世代もいつまでも出産できるわけではありません。医学が進歩したとはいえ、女性が出産できる年齢には一定の限界があります。団塊ジュニア世代が出産可能年齢を超えれば、その後には「親となる年齢の人口自体が急激に減る時代」がやってきます。
では、ジェットコースターのような急激な少子化が再び始まるのはいつになるのでしょうか?
赤い棒グラフを見ると、団塊ジュニア世代の山の後の「ジェットコースター的に急激な少子化」は、開始年が1979年、終了年が1989年くらいです。この人たちが35歳になるのは、2014年〜2024年です。青い線や緑の点線が示すように、そのころになると親世代の人数は年齢当たり130万人未満にまで落ちてきます。ちきりんは、そのころから再び、驚くようなペースでの少子化が始まるのではないかと予想しています。
少子化傾向がここ15年ほど“少しだけゆるやか”になってきていたのは、年齢当たり200万人もいる団塊ジュニア世代が結婚出産する“駆け込み適齢期”になっていたからです。
しかし次の時代、つまり5年後から15年後にかけては、親の数自体が年齢当たり130万人くらいまで下がってきます。親年齢の世代が200万人いても最近の出生数は110万人程度なのですから、親世代が130万人となれば、出生数は70万人というようなレベルになってもまったく不思議ではありませんよね。
もしこの予想が正しければ、消費税の引き上げも、年金制度の抜本改正も、大事なことは、5年後以降に起こる可能性のある“再度の出生数の急降下”を前提として検討すべきだということです。
現在のような「一時的に収まっている少子化傾向」を前提に試算しても、将来に備えることはできません。この赤い棒グラフは、いつまで“横ばい”を続けてくれるのか。それが大きな問題なのです。
そんじゃーね。
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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