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» 2010年09月09日 08時00分 UPDATE

-コデラ的-Slow-Life-:近代化の過程にあるカメラ「Voigtlaender VITO CLR」

ジャンク品として入手したVITO CLRは、シャッタースピードの設定がうまくできない。シャッター機構は腕時計並みの複雑さなので、今回のレストアは成功するだろうか。

[小寺信良,Business Media 誠]

 久々のVoigtlaender(フォクトレンダー)である。思えばこの連載の第1回に扱ったのが、「Voigtlaender VITO BL」であった。

 Voigtlaenderは、現在日本メーカー「コシナ」のブランドになっているが、かつてはドイツに実在したカメラメーカーである。歴史をさかのぼれば1756年ウィーンに創業というから、大変なものだ。創業当時はレンズ製造をはじめとする光学機器メーカーで、オペラグラスを大ヒットさせたそうである。

 現在もVoigtlaenderといえば、中古カメラ市場では高級ブランドだが、VITOシリーズは大衆路線の量産機なので、そこそこの値段で手に入る。まあ、筆者が道楽で買えるぐらいの値段である。

 VITO BLは、そのやわらかな描写で大変気に入っている。ただ距離計がないので、開放でシビアなフォーカスの撮影があんまりうまくいかないという弱点がある。

 入手したVITO CLRは、VITO Bシリーズの後継となるVITO Cシリーズの中で、比較的よく目にするモデルだ。1962年製造であるから、いまから48年前のカメラということになる。モデル名のLはセレン式連動露出計付き、Rは連動距離計付きという意味だそうである。のちに露出計をCdS素子に変えたSという型番に替わり、VITO CS、CSRというモデルも出たようだ。まあアルファベットが3文字付いてると、いわゆる「全部入り」となる。

コデラ的-Slow-Life 露出計、距離計付きのVITO CLR

 大きなファインダーはそのままに、二重像式の距離計を備えている。そのため、中央部に測距用の丸い穴が見える。ファインダーはいわゆる素通しのガラスなので、大変見やすい。

コデラ的-Slow-Life 大型ブライトフレームの中央部に距離計の丸い穴が映っている

 レンズはCOLOR-SKOPAR(カラー・スコパー)の50mm/F2.8で、BLのF3.5より1絞りほど明るい。ただし、最短距離は1メートルまでしか写らないので、ポートレート用である。

コデラ的-Slow-Life レンズは写りに定評があるCOLOR-SKOPAR 50mm/F2.8

露出計と連動するシャッターがクセモノ

 興味深いのはシャッターボタンで、てっぺんではなくレンズ脇に設けてある。レンズシャッター式カメラの初期は、シャッター機構から離れたところにシャッターボタンを配置することができなかったので、レンズ脇にシャッターボタンがあるカメラも多くあったが、CLRよりも古いBLの時代ですら、すでにVoigtlaenderでは軍艦部にシャッターボタンを付けていた。

 軍艦部にはこのカメラのウリである露出計が載っているので、シャッター機構を持ってくる場所がなかったとも考えられるが、デザイン的にはなんだか蛇腹式時代に先祖返りしたように見える。

 露出計部分は、白い針がセレンの感度に合わせて自由に動くようになっており、赤い針はシャッタースピードと絞りに合わせて動くようになっている。白い針と赤い針を合致させるように調整することで、露出設定をするというわけだ。

コデラ的-Slow-Life 露出計と連動するところがミソなのだが……

 1つの要素、例えば絞りだけに針の動きが連動するなら大したことはないが、シャッタースピードと合わせて2つの要素をうまく案分しながら針を動かすのは、機構としてはかなり複雑である。

 中を開けてみないと分からないが、同年代のカメラKodak Retina Reflexでは、何と糸を使ってリングと露出計の連動を行っていた。こうなると組み立てはものすごく大変で、筆者は過去2回、同型のカメラのレストアに失敗している。遺言に「Retina Reflexには手を出すな」と書こうかと思っているぐらいである。

 本機がジャンクの理由は、シャッタースピードの設定がうまくできないという理由による。目測では、最高速の1/500秒は正しく動いていると思われるが、それに続く1/250秒以下がどうも数字より遅い気がする。1/15にいたっては1/30よりも早いという、へんてこなことになっている。

 内部のギアがズレている程度なら大したことはなさそうだが、一応全速でシャッターが下りるというあたりが逆に、病状がただごとではない雰囲気がただよっている。シャッター機構は腕時計並みの複雑さなので、正直上手く直せる自信がない。今回のレストアは成功するのか、それとも遺言状に新たなカメラ名が刻まれるのか。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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