菅さんの悪い癖、“小沢総理”の不安藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年09月06日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 民主党代表選の街頭演説は大変な人出である。国民の関心は高い。まだ民主党に期待したいという人が多いということでもあるだろう。

 菅直人首相と小沢一郎前幹事長の演説を聞いていた人の感想で興味深いのは、小沢さんのほうが力がありそうとか、菅さんが抽象的なのに比べると小沢さんのほうが具体的だったという人が意外に多いことだ。代表選出馬が決まってから、テレビ番組などにも出て饒舌に話す小沢さんを見て、「こんな人だったのか」と思う人も少なくあるまい。

 小沢さんのほうに内容があるというより、菅首相のほうに内容がない、あるいは具体性がないことのほうが問題だと思う。政権を担当してわずか3カ月しかないとは言っても、鳩山内閣時代は副総理で、今年に入ってからは財務大臣も兼任した。国をどのように導こうとしているのかについて具体的なビジョンがなければおかしいのである。

菅首相の悪い癖

 官僚依存からの脱却を掲げて1年前の総選挙で勝ったのに、このところ菅首相はすっかり官僚寄りになったと小沢さんは批判する。これに反論するために、大阪での立ち会い演説会では、自分が厚生大臣(当時)だったときに薬害エイズ問題を解決に導いたことを持ち出し、官僚寄りになったわけではないと反論した。そして具体性に欠けるとか景気対策についてビジョンがないと批判されて、「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と叫んだ。

 何か言われるといちいちそれに反論するのは菅首相の悪い癖かもしれない(国会答弁などでも、イライラしてつい余計に相手を挑発する姿はよく見る)。でも、国民が聞きたがっているのは、日本経済の窮地をどうやって救うのかということなのである。雇用が増えなければ税金も払ってもらえないから、雇用を増やすことが大事だというのはその通りに違いない。だが、どうやって雇用を生み出すのか、そしてどれだけを目標に増やすのか、そこがまさにポイントだ。2010年末の予算編成を見て判断してほしいと菅首相は言っているから、来年度予算で思い切った政策を打つということなのだろうか。

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