コラム
» 2010年09月03日 08時00分 UPDATE

“引き算+α” 独自路線を歩む三菱の家電戦略 (1/3)

前年モデルに何か新しい機能をプラスする、もしくは大幅なデザイン変更を行って注目を集めるのが、これまでの“最新家電”のあり方。その一方で、単なる多機能・高機能化でなく、独自の技術を駆使した“ユーザー視点の家電作り”を目指す三菱電機のマーケティング戦略に注目する。

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神原サリー(かみはら・さりー)

神原サリー事務所代表取締役。青山学院女子短期大学英文科を卒業後、福武書店(現:ベネッセコーポレーション)、サンケイリビング新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。


 三菱電機から今年発表された家電のラインアップを見てみると、これまでの最新家電の定説を覆す独自のものになっていることに気付かされます。除湿乾燥機やIHクッキングヒーター、炊飯器……そのどれもが、これまで搭載されていた機能を絞り、シンプルな作りになりました。

 とはいっても、PB家電によくあるような“シンプルなデザイン”を売りにしているというわけではなく、基本機能に“ユーザー視点の利便性”というエッセンスが加味されているのが特徴です。つまり、高機能なもの、多機能なものへの進化ではなく、「引き算+α」とでも言ったらいいでしょうか。

部屋干しの乾燥に的を絞った除湿乾燥機

 5月に発売された除湿乾燥機は、下写真を見ても分かるように前年モデルよりもグッとコンパクトですっきりとした印象を受けます。

ah_mitu1.jpg 最新モデル(左)と前年モデル(右)

 盛りだくさんの機能が搭載されていた前年モデルとは打って変わって、基本機能である「除湿」と、近年の夜家事スタイルによる洗濯物の部屋干しにも対応した「衣類乾燥」、浴室のカビを防ぐ「浴室カビガード」に絞ったシンプル設計に大変身。除湿した空気を温風と冷風で吹き分けることで、ちょっとした涼がとれる「スポット冷風」や、冬場の脱衣所などで活躍する「ヒーター機能」をなくしているのです。

 これでは一見、引き算だけかと思うかもしれませんが、ユーザーのニーズに合わせた「プラスα」がちゃんと加味されています。それは、部屋干しの衣類をより効率的に乾かすために、同社のエアコンや冷凍冷蔵庫でおなじみの赤外線センサー「ムーブアイ」を搭載したこと。洗濯物の位置と乾き具合を見極めるセンサー技術を使って、厚手の洗濯物や遠くに干した洗濯物を判別。そこを狙って乾いた空気を送ることで乾きムラをなくせ、20%の省エネになるということです。また、部屋干し特有のニオイが発生しにくいという特徴もあります。

 ムーブアイによってセンシングするのは簡単でも、それと連動して風を集中的に送り込む「新たなルーバーの機構」こそが開発者が一番苦心した点とのこと。得意とするセンサー技術を生かしつつ、「洗濯物を効率よく、なるべく早く乾かしたい」というユーザーの思いを具現化し、これまで梅雨時を中心とした季節家電と思われがちだった除湿乾燥機を、通年商品へとチェンジさせようとする熱意が感じられます。

 機能を絞ったためにボタンの数が減って操作性が向上したのはもちろんのこと、機能表示の文字もぐんと大きく見やすくなっているのもポイントです。

 今年度の除湿乾燥機の新製品の発売は各社とも4月中だった中、三菱は5月の連休明けにずれ込み、最後発となりましたが、加速的に売り上げが伸びて遅れを取り戻し、人気商品になったとのこと。“部屋干し対応”という明確なターゲットに加え、機能を絞ったことで前年モデルより2〜3万円下げることが可能になり、それが消費者の購入を後押しする結果になったのではないでしょうか。

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