閣僚の軽い発言は、政治主導の弊害なのか相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年09月02日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 内閣府が四半期に一度発表する国内総生産(GDP)という経済指標をご存じだろうか? 国の経済全体を俯瞰し、景気の善し悪しを判断する重要な統計である。だが、昨年から、この重要経済統計を巡り、信じられない事態が二度も起こった。その原因は、民主党政権の閣僚だ。今回の時事日想は、同統計を巡る閣僚発言の危うさに触れる。

2010年4〜6 月期の実質GDPと名目GDP(出典:内閣府)

フライング開示と認識のズレ

 2009年11月16日午前、筆者は午前中の執筆を終え、昼時のニュースにチャンネルを合わせ、仰天したことを鮮明に記憶している。同日は2009年7〜9月期の国内総生産(GDP)の発表日。事前の市場予想よりも強めの数値が出たことにまず驚き、その後の関連ニュースで筆者は腰を抜かすほど驚かされたのだ。

 多くの読者がご記憶だと思うが、同日の統計発表の30分前、直嶋正行経済産業相が業界団体との会合でGDPの中身を披露していたと伝えられたためだ。

 先に当コラムで指摘したが(関連記事)、GDPは日銀短観と並ぶ経済指標の“王様”である。内外の名だたるエコノミストが事前予想リポートを発表し、外為、株式、債券市場のディーラーやトレーダーが発表と同時に「売った・買った」のアクションを起こす。統計の善し悪しが株価を急落させ、はたまた円高要因にもなり得るのだ。

 当然、統計の中身は担当者によって厳重に管理され、間違っても株式のインサイダー取引に悪用されるようなことがあってはならない。

 通信社の記者として、筆者は何度も日銀短観の速報に携わり、GDP発表後の市場の乱高下に直面した。事前にこれを業界団体に説明するなどというのは、経済界ではあり得ない話。だが、当の直嶋氏は記者に問いつめられると「失礼しました。(コメントを)あんまり使わないで」などと苦笑交じりに応じていた。

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