山のような建築 雲のような建築 森のような建築(2/3 ページ)

» 2010年08月31日 08時00分 公開
[加藤孝司,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

 3階は「建築がうまれるとき」と題された展示フロアがひろがる。藤本壮介建築設計事務所設立以来10年の間に蓄積された建築模型のモデルが、か細いスチールの支柱の上に雲のようにゆらゆらとゆらめきながら展示されている。

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 展示されているのは藤本氏の建築における「最初のアイデアの兆し」や、植物の葉やクラシック音楽の楽譜、おにぎりやマトリョーシュカなど、一見、建築とは関係のなさそうな「インスピレーションの種」のようなものたちだ。

 それらが最近竣工したばかりの藤本氏の作品「東京アパートメント」や「武蔵野美術大学図書館」などの建築模型と並列的に展示されている。建築とそれらの関係をイメージし、ひも付けながら藤本氏の建築の世界を観てまわることになるのだ。

 人はときに自然のなかにある洞窟や森、あるいは自然素材を利用してつくる「かまくら」などを建築やすみかにみたてたり、巨大な鍾乳洞をまえに大聖堂を想像したりする。それら自然発生的とも風土的ともいえるものを根拠にしながら、人間にとって本当の意味での自然で快適な住居とは何なのか。それを建築の手法にとどまることなく模索する藤本氏の姿をこの展示から感じた。

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 本展で「自然」とともにキーワードになっているのが「東京」だ。4階にはワタリウム美術館のある青山一帯の敷地を前出のスチールの支柱の森で一軒一軒空中に浮かせた「空中の森/雲の都市」、そしてそこに街が隆起してできたような見慣れない「山のような東京」を風景の中に挿入した。

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 北海道で生まれ育った藤本氏にとって、「自然」、そして「東京」とはどのようなものなのだろうか。

 「もともと僕は北海道で生まれたので、自然はものすごく大きなもので、自然と人間との境界ははっきりと分かれているというふうに感じていました。でも、東京に来て、自然と人間ってもっとうまく交われるんじゃないかと考え方が変わりました。人間がそもそも自然の生き物じゃないですか。人間が作るものも自然に近くなるかもしれないし、自然のものも人間の生活をより豊かにしてくれるような、互いが溶け合えるような感じがしているんですね」

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 「ですので僕は自然と建築物=人工物のあいだくらいというところが一番面白いところなのかなという気がしています。東京みたいな自然と人工物がいままで思いもしなかったようなかたちでミックスされているようなものが出来れば非常に面白いかなと思います」

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