第37鉄 夏の青春18きっぷ旅(1)日本三大車窓とJR最高地点を訪ねる杉山淳一の+R Style(4/6 ページ)

» 2010年08月31日 11時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

小海線のハイブリッド車両、乗り心地は意外にも……

 次の目的地は小海線の野辺山駅。長野行きに乗って篠ノ井駅で乗り換え、しなの鉄道へ。しなの鉄道は元はJR信越本線で、長野新幹線開業と同時に第三セクター会社となった。いまはJRではないので青春18きっぷは使えない。車窓のおススメは進行方向右側で、列車は千曲川に沿って走っていく。しなの鉄道の車窓といえば浅間山の構えだけれど、今回は残念ながら、その景色の手前の小諸駅で降りる。

しなの鉄道で小淵沢へ
しなの鉄道の千曲駅。2009年に新設された

 乗り継ぎ客を待っていた列車は、ハイブリッド方式のディーゼルカー「キハE200形」だ。鉄道車両もエコの時代、というわけだ。車内の掲示によると、キハE200形が自動車のハイブリッドカーと違うところは、エンジンと車軸を直結するモードがないこと。エンジンの回転はすべて発電機に送られて、その電力でモーターを回して走る。つまり、火力発電所を内蔵した電車である。余った電力は蓄電池に送られる。ブレーキをかけた時の車軸の回転でも発電機を回して充電する。

 さて、その乗り心地はどうかというと、意外にもうるさかった。自動車のハイブリッド方式のように低速時は静かだと思っていたけれど、かなり違った。確かに発車時は電車のように静かだった。でもそれはほんのわずかな時間で、加速が始まるとエンジンがフル回転して発電を始める。一般的なディーゼルカーなら、低速時や惰性運転の時はエンジン回転数が下がるが、キハE200形は常にエンジンをフル回転させるようだ。

 ただし小諸から野辺山まではずっと上り坂だから、常に電力が必要になる。下り坂はきっと静かだろう。そもそもハイブリッド方式は静かに走るための仕組みではなくて、エンジンの回転力を効率よく使う仕組みである。燃料を常に完全燃焼できるため、排出ガスがずっときれいになるという。JR東日本が小海線にキハE200形を投入した理由は、高原の自然を大事にしたいという気持ちのあらわれかもしれない。

レンタサイクルでJR最高地点を訪ねる

 小諸を出た列車は1時間ほど市街地を走る。ここは佐久盆地で、千曲川の恵みによって古くから栄えたところだ。途中には新幹線が停まる佐久平駅もある。中込駅あたりで車窓左に山が近づき、青沼駅あたりで車窓右にも山が迫る。八千穂駅を過ぎると線路は山に挟まれて、ようやく高原鉄道らしい雰囲気になる。UVカットガラスを通して車窓を観ると、緑色が強調されている。空の青色も強く、雲の形がはっきり分かる。なんとなく北野武監督の映画手法「キタノブルー」のようで面白い。

小海線の車窓。UVカットガラス越しの眺め

 ハイブリッド車両に揺られて約2時間で野辺山駅に着いた。ここは清里高原の避暑地、高原野菜の産地としても知られている。鉄道ファンにとって野辺山駅は、JRのなかでもっとも標高が高い駅としても知られている。列車を降りると、車内の冷房と同じくらい涼しかった。ここで降りる乗客は多く、誰もが「JR線最高駅」の看板と記念撮影をして混雑する。でもこの看板、実は上りホーム、下りホームにいくつかある。一カ所が混雑していたら別の場所を探せば、他の人が映らない写真を簡単に撮れる。

ハイブリッド車両で野辺山駅に到着
野辺山駅のかわいい駅舎。観光案内所にレンタサイクルがある

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