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» 2010年08月27日 10時00分 UPDATE

誠 Weekly Access Top10(2010年8月14日〜8月20日):印税率が上がると、販売数ランキングが信頼できなくなる?

従来の紙の出版より中間コストが省けることもあって、電子出版では印税率が高くなる傾向にある。しかし、印税率が高くなると、販売数ランキングが信頼できなくなる可能性が出てくるのではないだろうか。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 先週最も読まれた記事は「もう限界かもしれない……“ブラック企業リスト”の実態」。2位は「ここでは働きたくないなあ……と大学生が思う業界」、3位は「朝日新聞が、世間の感覚とズレにズレている理由」だった。

印税率が上がると、販売数ランキングが信頼できなくなる?

 今週火曜の記事「これがITベンチャーのリアル――堀江貴文氏が語る、小説『拝金』の裏側」と、今年3月の記事「“マーケットイン”で米国No.1のiPhoneアプリに――柳澤康弘パンカク社長が語る『LightBike』開発」で共通して語られていたのが、販売数ランキング上位に入ることの重要性である。

 売れる作品だからランキング上位に入るのか、ランキング上位に入るから売れる作品になるのかは、にわとりと卵のような話だが、つまりはランキングページの注目度が高い分野だと、一度ランキングに入れば、雪だるま式に売り上げが増加するというわけである。

 ここで少なからずの人は「それなら、ランキングを広告ととらえて、自分である程度商品を買い占めることによって順位を上げてはどうか」と思うのではないだろうか。しかし、普通に考えると、それは割に合わないことが分かる。

 出版を例にすると、多くの本の印税率は10%ほど。Amazon.co.jpでは1000冊売れるとベストセラーランキング上位に入るとすると、500円の本を上位に入れるための費用は45万円(支払額50万円−印税5万円)。この45万円の投資を回収するためには、ランキング上位に入った広告効果で9000冊(45万円÷1冊の印税50円)を追加で売らなければならない。

 だが、印税率が上がると、話が変わってくる。500円の本で印税率が90%とすると、ランキング上位に入る(=1000冊買う)ための費用はたった5万円(支払額50万円−印税45万円)。これを回収するためには、販売数をわずか112冊(5万円÷1冊の印税450円)増やすだけでいいことになる。

 90%とまではいかないが、現在、iPhoneアプリやAmazonのKindleなどでは、作者の取り分が70%というラインが主流になりつつある。個人で出版する場合、どうしてもPR方法が限られるので、その代わりとして高い印税率のメリットを生かした、買い占めによるランキング上昇戦略がとられるようになるのではないかと筆者は考えている。ランキングが上がったからといって必ずしも売れるわけではないだろうが、内容に絶対的な自信があるならば、そうして注目を集めることがメリットになると判断する人は少なくないだろう。

 もちろん、iPhoneなどでは単独のデバイスで同じ商品を2つ以上買えない仕様になっているので、この戦略は現実には使いにくい。しかしそれならば、例えばWebサイトやTwitterなどで、「先着1000人の購入者には、代金に加えて100円を進呈します」と訴える手もある。500円の本で印税率が70%とすると、その1000冊分の費用は25万円(支払額60万円−印税35万円)。ペイするためには広告効果によって、715冊(25万円÷1冊の印税350円)追加で売れればいいことになる。

 もちろん、そうした行為が不正とされることもあるかもしれないが、取り締まるのはなかなか難しい話であり、プラットフォーム側にもメリットがある話なので、ランキングを上げるための請負商売がこれから立ち上がっていくのではないかと思ったりもする(すでにあるかも)。これは本に限らず、作者の取り分が多くなる分野では、恐らく同様のことが問題となるのではないだろうか。

 まあ、こうしたランキング操作が横行すると、ランキング上位に入るためのハードルが上がって割に合わなくなったり、ランキングページを見る人が減って広告効果が薄れたりするだろうが……。

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