“休日分散化”の先進地域、欧州のバカンス事情を見る松田雅央の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年08月24日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 筆者の住むドイツの夏は、日本に比べるとずっと過ごしやすい。例えば首都ベルリンと東京の年平均気温を比べると、ベルリンは約10度、東京は約16度と6度の差があり、さらにベルリンは湿度が低いため真夏日でも木陰に入れば結構快適に感じられる。

 しかしながらドイツにも年によっては熱波が来襲し、近年その頻度が高まり日数が延びているという話をよく聞く。この7月上旬にはベルリンで最高気温38.7度を記録し、これは50年ぶりの記録更新だった。短い夏よりも長い冬に備えるのが普通なので家庭のクーラー普及率はゼロに等しく、これだけの酷暑はかなり辛い。

 そんな暑さを逃れ1〜3週間のバカンスに出かけるのがドイツの典型的な夏の過ごし方であり、夏休み前は「バカンスはどこへ行く?」、そして休みが明けるとまず「どうだった?」と聞くのが職場の話題の定番だ。

公園の噴水で遊ぶ子どもたち(ミュンヘン、7月中旬)

州ごとに異なる休日

 夏のバカンスシーズンは6月下旬から9月上旬まで実に3カ月半も続き、勤労者はその間に交代で休暇を取ることになる。ただ、夏のバカンスシーズンだからといって会社や工場がすべて休業し、街から人影が一斉に消えてしまうわけではない。確かに小売店など2〜3週間の夏休みを取るところは多いが、バカンスシーズン中に社会機能が停止するほど極端なことは起きない。

 この長いバカンスシーズンの背景にあるのが、いわゆる「休日分散化」の仕組みだ。基本的にドイツの16州はすべて夏休み時期が異なり、先頭を切るブレーメン州は6月24日から8月4日まで、最後のバイエルン州は8月2日から9月13日までとなる。ちなみにここでいう夏休みとは「小中高などの学校の夏休み」を意味する。ドイツの夏休み開始日には40日近くもの開きがあり「ブレーメン州の夏休みが終わってからバイエルン州の夏休みが始まる」という日本ではちょっと考えられない状況が生まれる。

 なお、州によって異なるのは夏休みにとどまらず、(学校の)秋休み・冬休み・春休み、法定の祝日にまで及び、カレンダーを見ると16州がまるで別の国のようだ。分散化には人為的な都合だけでなく宗教上の理由もあり、カトリックの盛んな州はその祭日、プロテスタントの盛んな州はその祭日をそれぞれ休日としている。ドイツは連邦制度をとっており各州が準国家並みの権限を持つため、こういうことが可能になる。

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