コラム
» 2010年08月23日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:日本は中国の軍事的脅威に対抗できるのか (1/2)

沖縄の基地をめぐって日米の根深い対立があることを利用して、中国海軍の動きが活発化している。「日本と米国が普天間問題にとらわれ、現実的な問題について議論する時間がなくなっている」と懸念する米国。日本の軍事の未来について、日本のトップはどのような考えを持っているのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 民主党代表選をめぐって、対立が激しくなりつつあるように見える。積極的であれ消極的であれ菅代表の続投を望む一派と、小沢前幹事長の出馬を期待する一派が角をつき合わせている。この動きを意識してか、菅総理の発言は参院選以降ずっと低姿勢のままだ。しかし低姿勢でいればいるほど、今の日本はどんどん深みにはまってしまう。

 そのいい例はもちろん経済である。日本政府の動きが鈍いことを見越して、ドルやユーロを売って円を買う動きがある。日本がこれだけデフレに苦しみ、この20年間というものほぼゼロ成長に近いというのに円が買われる。もちろん経済が強いのなら通貨が高くなるのはまあ理解できるし、通貨が高くなれば輸出産業もより高度化あるいは高付加価値化するように努力するから産業構造も変わっていく。結果的に経済はさらに強くなるという好循環になるから円高も悪くはない。

 しかし今の円高は違う。ドル安、ユーロ安の裏返しとしての円高。それも政府や日銀による為替介入もないことを見越しての円買いである。もちろんギリシア風に日本の国債の返済不能が取りざたされることは、ここ当分はないと踏んでの円買いだ(だから国債はまだまだ発行できると主張する元大蔵官僚もいるが、その説には納得できない)。

中国海軍の動きが活発化

 経済でも外国の諸勢力にいいようにやられているようだが、経済だけではない。鳩山前首相が「ぶっ壊して」しまった沖縄の普天間基地移設問題。沖縄の基地をめぐって日米の根深い対立があることを利用して中国海軍の動きが活発化している。中でも米国やアジア諸国が気にしているのが中国海軍が建造中の空母だ。空母の就役に向けて航空機の着艦訓練を行う基地も建設するなど着々と準備が進んでいる。

 そして沖縄周辺でも活発に活動をしている。グーグルの地図を見ると、中国が太平洋に進出しようとすると、沖縄はまさにフタをするような形で存在している。その意味では、沖縄の米軍基地がどうなるかは、中国にとって極めて重要な問題だ。それに中国は、近い海域で米軍空母機動部隊が演習を行うことに非常に神経質だ。先日も米韓軍事演習が黄海で行われることに強い不快感を示した。

 そこにまた気になるニュースがあった。日本の防衛省が新たに策定した沖縄・南西諸島防衛警備計画に基づいて、米軍と共同で陸海空自衛隊による初の「離島奪還訓練」が行われるというのである。かつてある自衛隊OBから聞いたことがある。「自衛隊は本土を守ることはできても、離島を占領されたら奪回することはほとんど不可能だ」

 離島を占拠した敵を攻撃する能力の問題だという。最終的には陸上部隊が上陸しなければならないが、その前に敵を叩いておくことが必要である。しかし現在の海上自衛隊や航空自衛隊は地上を攻撃することがきわめて限定的にしか想定されていない。自国を防衛するためには、空から侵入する敵と海から侵入する敵を早い段階で叩くことが前提となっているからである。

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