コラム
» 2010年08月23日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:「ずっと病院にいたいんです!」なんて言わないで (1/2)

2007年に大阪で発生した、病院職員が患者を公園に遺棄するという事件。治療の必要はなく、入院費を払わない患者に行った病院側の対抗策だったが、遺棄した病院職員は逮捕された。ちきりんさんは、この事件から日本の社会保障のあり方を考察する。

[ちきりん,Business Media 誠]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん(Twitter:@InsideCHIKIRIN)。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年3月12日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 2007年、大阪で病院が患者を公園に遺棄するという事件がありました。この患者(63歳の男性)は糖尿病で全盲。治療の必要はすでになく、病院側は福祉施設に移るよう勧めましたが、本人が退院を拒否していました。

 しかも、なぜか本人の障害年金を前妻(63歳)が管理しており、数年前から入院費も不払いになって不払い残高が200万円近くに達しており、病院ではほかの患者や職員ともトラブルを起こしていたそうです。

 病院職員はこの患者を前妻のところに連れて行って、引き取るよう(もしくは、入院費用を支払うよう?)依頼しますが拒否されます。職員はその帰りに大阪市西成区にある公園のベンチに患者を座らせ、救急車を呼んだ上で置き去りにしたのです。

 結局、この医療関係者は医療法違反で逮捕され、病院長は「あってはならないこと」と謝罪しました。

病院はどうすればいいのか

 さて、この事件はさまざまな問題を示唆してくれます。

 まず、何百万円踏み倒されても、病院は“治療の必要もないのに居座る人”に出て行ってもらえないのでしょうか。

 “治療の必要があるが、お金はない患者”を追い出すというのなら、倫理的な問題が発生します。「生活保護を申請してもらって治療を続ける」ということが選択肢になるでしょう。しかし、“治療の必要がなく、かつ、お金もない人”を世話すべき機関が医療機関だとは思えませんよね。

 それはあきらかに福祉機関の役目であるはずですが、患者もお金のない人が暮らすことになる福祉施設よりも病院の方が居心地が良いことは分かっていたのでしょう。

 では、本人が移転を拒否すれば、病院には何の手立てもないのでしょうか。ほかの病院で、もしくは、今後もこういう事例が発生した場合、いったいどのように対処すべきなのでしょうか?

 また、前妻が患者の障害年金を管理し続けているのは不可解ですが、こういった“受け取るべき人以外が年金を受け取っている”事態に対して、責任を持って手を打つべきなのは誰なのでしょうか。

 この件では病院の職員がわざわざこの前妻を訪問していますが、少なくとも離婚した妻に、本人を保護、世話する義務があるとは思えません。“離婚した妻”なんて他人です。

 病院としては「患者の障害年金を受け取っているのだから、世話もしてほしい」ということなのかもしれませんが、これは理屈が反対です。「赤の他人が年金を管理しているおかしな状態」をまずは正すべきであり、それは病院ではなく社会保険庁の仕事でしょう。いったん年金支払いが始まると、本人が死亡していても、離婚していても、変わらず同じ口座に振り込み続けるという年金の仕組みは、あまりに安直に過ぎると思います。

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