夏季休暇を取れない人は能力が低いのか吉田典史の時事日想(3/3 ページ)

» 2010年08月20日 08時20分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]
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 例えば、独立行政法人の労働政策研究・研修機構がある調査(2005年)を行った。ここ3カ年の「職場の変化」をテーマにしたものであり、従業員側と会社側の双方を対象としている。それによると、労使双方の半数以上が「できる人に仕事が集中するようになった」としている。理由や経緯はさまざまだが、優秀な人に仕事が集中しやすい傾向が強くなっていることは事実である。これも、夏期休暇を取れない人が現れる一因である。

 話がややそれるが、大切なことなので述べておきたい。いまや、仕事の量はその人の職務遂行能力などの違いにより、大きな差が出ている。その差がフェアで明確な基準によるものならば、問題はないかもしれない。

 ところが、実態はそうではない。にも関わらず、企業内労組は組合員(社員)の仕事のあり方について改善を求めない。本来、仕事の分配を公平な基準に基づき進めることを要求するべき。春闘のときに賃上げを求めることだけが、労組の役割ではない。このあたりについて労組の役員たちから意見が聞かれない。残念だ。

同僚ならば、何らかの支援を

 Dのケースは「落ちこぼれ」と自分で思い込み、「自己責任」のワナにはまるケースだが、これは新卒や中途採用で入社し、日が浅い人に目立つのではないだろうか。あるいは、上司から厳しく叱られるなどして、「自分はダメだ」と思い詰めていく人にも当てはまるように思える。

 この人たちは、真面目で誠実な性格なのだろう。自分が皆に迷惑をかけていると思い込み、休みを返上して何かをしなくてはいけないと思う。さほどやるべき仕事はないのだが、出社したりする。こういった人は、私がかつて勤務した会社にいたし、今の取引先にも数人いる。この中の一部は「心の病になっている」とそこの社員から聞く。私は、この人たちの職務遂行能力が低いのかどうかは分からないが、会社として何らかの対応はするべきだろう。

 この時期、夏期休暇を取れる人とそうでない人が現れる。休みが取れない人のその理由を「本人の責任」として片付けることは好ましくない、と私は思う。ましてや、「能力が低い」と言うのは論理が破たんしている。そこまで言い切るだけの根拠が本当にあるのだろうか。同僚ならば、せめて「なぜなのか?」と考えてあげてほしい。厳しい時代だが、そのくらいの支援はあってもいいのではないか。

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