夏季休暇を取れない人は能力が低いのか吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年08月20日 08時20分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

休日に働き、アピールする方法

 次にBの、「柔軟な職務構造」の中で仕事の進め方を心得ていないというのは、不器用な人と言えるのかもしれない。例えば、今回、取材した大手メーカーで言えば、営業部の30代半ばの男性社員が「9月の社内セミナーで講師をしたい」とエントリーした。それでレジュメを作ることになったが、タイミングが悪かった。その部署は業務が多く、皆がオーバーワークだ。なので誰も彼を支援することができない。結局、この社員は、夏季休暇を返上してレジュメ作成に取り組んだ。

 このアピールする姿勢は素晴らしいことだが、タイミングが悪かった。部署全体が忙しい時期に休みを取ることなく仕事をしても、上司からはあまり認められない。上司も余力がなく、部下の働きを見据えることができていない。そこで、上司が人事考課(査定)をする3カ月前以内に、部署の仕事が少ないときを見計らいエントリーすることを勧めたい。

 そのときこそ、休みを返上して働くことが大切である。さらに、それを上司に細かく報告する。もちろん「上司のおかげで……」という切り口で伝える。できれば、社内で「オレの上司は素晴らしいよ」と吹聴したい。特に上司の同世代で、親しい同僚を狙うといい。そうすれば早い時期に上司の耳に入るので、ほぼ確実に高い評価が付くだろう。

部下を潰しても、左遷はされない

 Cの、優秀で目立つがゆえに、仕事を押し付けられることは、よく見られる光景ではないだろうか。当然、仕事を押し付けるのは上司である。前提として理解すべきことは、上司の最大の使命は部署の業績を上げることであり、部下の育成ではない。

 極論だが、部下を酷使し潰したところで、それで降格になったり左遷されるケースはほとんどない。企業の現場を知らない有識者は「そのような上司は淘汰される」と言うが、それは事実ではない。有識者の大半は一部の優良企業の経営者、役員、本部長クラスとしか接点を持っていない。これでは、企業社会の実態に迫れないだろう。

 管理職は、自らが仕切る部署が業績を上げていれば、たとえ部下を潰したとしても許されるのが、多くの大企業なのである。ここに、イジメやパワハラなどが行われる一因がある。ましてや、管理職には重いノルマが課せられいて、高い業績を出すことが強く求められる。こういう事実を踏まえれば、優秀な人に仕事が押し付けられる可能性は高い。

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