長谷川さんは、製薬会社のテレビ番組連動のiPadアプリ仕掛け人として一躍有名になった。個人所有のiPadは、仕事はもちろん、自身の生活の一部としても使用している。
「情熱の系譜」(テレビ東京)は、現代の偉人が自分の情熱の系譜にある先人の偉業をたどる番組。8月2日の放送では、日本の文化・感性をスイーツに吹き込むパティシエ辻口博啓さんが、画壇に新風を巻き込んだ長谷川等伯氏を語った。7月より配信しているiPad限定動画では、アルピニスト野口健さんが伝説の冒険家植村直己氏を熱く語っている。さて、iPad限定の動画配信までやるのはなぜですか?
「元気のある会社をアピールしたいんです」と長谷川さん。
きっかけは協和発酵とキリンファーマの合併(2008年)。合併に先立ち、社員アンケートで「どんな会社にしたいか?」と聞くと、1位は「信頼・誠実」、2位は「躍動感」だった。同社はマジメな製薬会社、信頼はもちろんだが、“躍動”をどう表現すればいいか?
長谷川さんは、自ら名刺のデザインやCI革新にも取り組んだ。「KYOWA KIRIN」のロゴを“元気の出る色”オレンジ色にして躍動を、フォントは太めにして信頼を表した。さらに「協和発酵=焼酎」「キリン=ビール」という一般イメージから脱却するため、テレビ番組の提供、iPadアプリというチャレンジを続ける。「新しいものに躊躇はしません」とにこやかに笑う。
チャレンジは奏功した。制作を担当するビルコムには「番組クオリティは圧倒的にいい」という電話までかかる。iPadアプリも1万を超えるダウンロード数を達成。無料アプリ全体でも上位に入る。
「iPadアプリが起点となって、TwitterやFacebookでどんどん語られていくようにしたいんです」
そう話すのは、ビルコムの早川くららプロジェクトマネジャー。テレビ番組やYouTubeは面をとる(大衆をつかむ)、iPadはTwitterなど参加型サイトと連携して話題を広げ深めるものと分析していた。
「『情熱の系譜』というコンテンツがiPadでみんなに広がる」のも「『スイス旅行 on iPad』で語り合う」のも本質は同じだ。そこにあるのは“iPadサイクル”である。
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