トリプルメディア時代の企業プロモーションデジタルPRの仕掛け方(2/3 ページ)

» 2010年08月19日 08時00分 公開
[野崎耕司(ビルコム),ITmedia]

ブームの土壌を築く

 そのためのアプローチは2つある。1つは消費者の潜在的な課題を見つけ、新たな需要を喚起することだ。つまり消費者に「そういえば、こういうものが欲しかった」と思わせる施策が必要になる。

 ミネラルウォーターの新製品を発表する場合を考えてみよう。例えば「ミネラルウォーターはからだをきれいにする」というメッセージを発信することで、消費者に同製品のカテゴリーの価値を伝えることができる。

 もう1つのアプローチは市場にブームを呼び込むこと、すなわち「需要がある」という既成事実を作ることである。具体的には、ミネラルウォーターブームを起こす仕掛けを考え、「流行しているなら試してみようかな」と消費者に思ってもらうようにすることだ。

 消費者の潜在的なニーズを掘り起こし、新たな需要を喚起することで、市場の価値に気付いてもらう。消費者は市場そのものに興味を持つと、自発的に個別の商品情報を求めるようになる。先述したバイラルムービーには、継続したブームの土壌を築く力は備わっていない。

消費者のインサイトをつかむ

 企業課題の認識とともに重要なのが、対象とする消費者のインサイト(行動や態度の奥底にある本音部分)の分析である。

 市場を啓もうできたとしても、消費者に自社商品を選んでもらえなければ意味がない。消費者が競合商品に流れないように自社商品をアピールするには、消費者心理を理解する必要がある。

 消費者の心理に働き掛けるアプローチは2つある。1つは「ポジティブアプローチ」だ。ミネラルウォーターの例でいえば、「ミネラルウォーターは美容に良い」など消費者にとってのメリットを訴求するメッセージは、消費者に響きやすい。

 もう1つは「ネガティブアプローチ」だ。「水にこだわらない生活を続けると、健康に悪影響を及ぼす可能性がある」といったマイナスの要素を含んだ情報を消費者に伝達する手法である。聞こえこそ良くないものの、実は消費者の心理に訴求する有効な手段なのである。

 デジタルPRの実現には、商品やサービスの対象に設定した消費者のインサイトを分析し、ポジティブアプローチとネガティブアプローチのどちらが有効かを判断することが求められる。

コンセプト設計で作り込む

 マーケティング課題の認識、ターゲットのインサイト分析が終わったら、具体的なプロモーションコンセプトを設定していく。このコンセプトは、一連のプロモーション活動を展開していく上で常に立ち返る軸となるものだ。市場動向や競合他社の状況を基に、「背景」「ブランド」「ターゲット」という視点から、「企業が消費者に伝えたいメッセージ」と「メディアや消費者が欲している情報」をすり合わせて設定するのが理想だ。

 こうして練り上げたコンセプトを、「誰に」「何を」「どの順番で」「どうやって」伝えていくのかという切り口から、具体的な戦略に落とし込んでいく。個々のプロモーションのコンテンツ作成には、以前に紹介した「ニュースの7要素」を考えるといいだろう(メディアに火を付けるコツ【前編】)。

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