コラム
» 2010年08月17日 08時00分 UPDATE

西友がノントレイで豚肉を販売する意味を考える

鶏肉ではトレイの包装をなくしノントレイの包装が行われるケースが増えており、環境負荷の低減のみならず、約40%の価格低減を行った事例もありました。このノントレイ包装が、今度は豚肉にも広がってきました。今回は、西友の豚肉でもノントレイ包装の事例を紹介します。

[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 西友は7月末から全国371店舗でノントレイ包装の米国産豚ヒレブロックの販売を開始しています。

 この商品は米国産地工場で店頭用のノントレイ包装を行い、日本へ輸出されます。日本に入った後は、加工工程を通さずにそのまま各店舗に配送されます。この方式への変更により、同社の発表によると、これまで使用していた流通用包装フィルムや販売用トレイが不要となり、年間で約2.5トンの容器包装の削減が可能になるとのことです(出所:2010年7月27日付 同社プレスリリース)。

 この方式のメリットは容器包装の削減のほかに、消費期限が延長されるところにもあります。従来のトレイパック加工工程をなくすことや店頭までの配送時間を短縮することにより、より鮮度の高いものを店頭に提供できるようになり、消費期限が従来品と比較して4日程度長くなるとのことです。

 トレイなど容器包装の削減や加工コストの削減により、当然、コスト低減が図られ、同社によると、毎日、安定的に100グラム当たり100円を切る99円で提供できるようになったとのことです。

 今回の取り組みは個々の品目として見ても面白いのですが、西友のスーパーマーケット業界の中でのポジショニングのあり方を示唆するものとして見ても面白いのではないかと思います。

 西友といえば、親会社のウォルマートがすぐに頭に浮かぶのではないでしょうか。ウォルマートというとその規模で有名ですが、最近は商品のライフサイクルでの環境負荷を測定するサステイナブルインデックス開発の取り組みなど、急速に環境経営にかじを切っています。

 西友も鶏肉に続いて豚肉もノントレイということで、環境負荷を低減する商品に本腰を入れて取り組むのは、1つの差別化の方向性になりうると考えます。

 スーパーと言うと特売で集客、顧客も新聞のチラシ広告を見比べて、最も安い商品を買い回るというイメージがありますが、そうした顧客をターゲットとすると価格競争に陥ってしまいます。

 価格競争といっても、ナショナルブランドでは仕入れでの値下げ交渉にも限界がありますし、プライベートブランドでも単なるメーカーへの製造委託では、コスト低減もままなりません。

 スーパーが固定客を狙っては失敗するという法則があるわけではありません。米国では、自然食品やオーガニック・フードなどの品揃えが豊富なホールフーズというスーパーマーケットチェーンが、ウォルマートの進出先でもウォルマートと伍して、というより顧客層をすみ分けて競争しています。日本でも、成城石井が高級イメージで固定顧客をがっちりつかんで堅調です。

 自然食品、オーガニック・フード、高級感とは違った価値の提案となりますが、環境負荷を低減する商品に強いというのは、固定客をつかむポイントになりうるのではと考えます。

 ただし、環境負荷を低減する商品に強いというポジショニングを築くには、いくつかのそうした商品を扱っているということではなく、その品揃えが圧倒的に、例えば7割以上がそうした商品で構成されているといったところまでいかなければ、ストアコンセプトとして認知してもらえないでしょう。

 「地球にやさしい」をストアコンセプトにまで持っていくのは、その響きとは裏腹に、決してやさしい道のりではありませんが、難しいからこそ、他社も簡単には真似できず、独自のポジションを築くことができます。

 個人的には、西友でもほかのスーパーでも構わないのですが、いずれかのスーパーがこの道を追求していってくれたら、日本の横並び競争体質にも一石投じることになり、非常に面白いのではと思っています。(中ノ森清訓)

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