コラム
» 2010年08月16日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:官僚の手で、産業構造を変えることができるのか (1/2)

保守党と自由民主党の連立政権になった英国が、大胆な改革を打ち出している。財政赤字に苦しむオズボーン財務相は、ほとんどの省庁の予算を25%カットするように求めた。一方の日本も財政難にあえいでいるものの、英国のような改革の動きが見られない。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 いろいろと誤算続きの菅首相。9月14日に予定されている民主党代表選も決して楽観はできないとされる。1年間に3人もの首相が生まれていいはずはないという消極的な支持、あるいは他に有力候補がいないという消去法の支持。これではたとえ民主党代表として再選されても、首相としての権力基盤はとても盤石なものではない。

 しかし日本が直面している問題は、政治の強いリーダーシップを要求している。円高、株安である。15年ぶりという高値をつけた為替は、さらに円高に進む可能性がある。その結果、輸出企業の採算が悪化し、価格競争力が低下する。欧州や米国が輸出主導での景気回復を目指しているというのに、日本は内需回復もできず、輸出産業は厳しい局面に追いやられるという構図である。

 円高に関しては政府の動きは鈍い。静養中だった菅総理は、「休みだったけど、為替には注目していた」などとのんびりしたことを言っていた。「行き過ぎた円高は容認できない」ぐらいのことは言ってもよかったと思う。一度、財務大臣のときに為替相場に言及して批判されたこともあり、羮(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹いたのだろうか。

菅総理が好きな英国

 菅首相のキャッチフレーズは「強い経済、強い財政、強い社会保障」である。それが実現できればこんなにいいことはあるまいが、問題はそれをどうやって実現するか、である。順番を間違えればそれこそデフレから脱却することもかなわず、大げさに言えば日本の沈下速度が速まるばかりということになりかねない。

 菅総理が好きな英国は、保守党と自由民主党の連立政権ということになったが、大胆な改革を打ち出している。財政赤字がGDPの11%という先進国中でも最悪の水準に達している英国は、赤字の縮小が急務だ。そこでオズボーン財務相はNHS(国民医療制度)には手をつけないものの、ほとんどの省庁の予算を25%カットするように求めた。これだけのカットということになると、当然小手先の節約などでは間に合わない。「英国という国をオーバーホールする」とエコノミスト誌の最新号(参照リンク)は書いている(ちなみに選挙制度も改革されるようだ。これまでの二大政党制が「時代遅れ」ということらしいが、民主党政権はどうするのだろうか)。

 しかしこれだけ政府の支出をカットするとなると、当然のことながら景気はどうなるのだろうか、という疑問が湧く。もちろん英国でも、いわゆるケインジアン(財政支出によって景気対策をするべき)と財政重視派との間で大論争となっている。米国のノーベル経済学者のポール・クルーグマン教授は、雇用が増えていない今、経済へのテコ入れを止めるべきではないとの主張だ。

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