“ブラックなカネ”と記者クラブの密接な関係上杉隆の「ここまでしゃべっていいですか」(3)(2/3 ページ)

» 2010年08月16日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
作家・経済ジャーナリストの相場英雄氏

上杉:Xさんのみならず、各社は自民党しか取材をしてこなかった。2009年に政権交代が行われましたが、その1年前に各社は「そろそろヤバイな」ということで民主党の番記者を増やしたりした。ところが人脈がないので、なかなかうまく取材ができない。政権交代したのにもかかわらず、民主党内の話を自民党議員のコメントを使って埋めるという不思議な記事が多かった(笑)。

 当時からよくお呼びがかかったのが、政治アナリストの伊藤惇夫さん。ボクも鳩山邦夫さんの秘書をしていたので、民主党議員に知り合いがたくさんいた。しかし記者クラブ問題を突っ込んでいたので、主要メディアでは「上杉を出すな!」という号令がかかっていた。なので各社は、伊藤さんのところに殺到したというわけです。

 他にはずっと民主党を取材していた神保哲夫さん、それに塩田潮さんなどが重宝がられてました。十分うなずける人選です。

 でも、他の評論家やコメンテーターはひどいものです。民主党の記者会見どころか、民主党取材を一切したことないくせに、「オレは全部知っている」という感じですから。

相場:テレビに出ている解説委員クラスの人は、そもそも取材をしようという気があまりない。部下の記者を使って情報を集めておいて、テレビでしったかぶりしてコメントしている。それって……「記者」と呼べるかどうか。

上杉:そういう人たちは「評論家」にしてもらえればいいのに。

記事で“お返し”してはいけない

窪田:テレビに解説委員の人たちがよく出ていますが、海外ではどのような状況なのでしょうか。

上杉:いますよ。例えばCNNの『AC360』を担当しているアンダーソン・クーパーはジャーナリスト。ジョン・キングはこの前まではジャーナリストでしたが、オバマ選挙後は政治アナリストになりました。

 アナリストは分析に重心を置き、取材をしなくてもいい。一方のジャーナリストは現場で取材をする。両者の役割は違うが、いずれも取材対象者からお金をもらってはいけない。ボクはニューヨーク・タイムズに1999年から2001年までいましたが、取材対象者から2ドル以上のお金や物品を受けてはいけないという“2ドルルール”がありました。いまではニューヨーク・タイムズのWebサイト(参照リンク)にルールが記載されていて、取材対象者と会食をしたり、ランチを食べたりすることですらNGになっています。

 クリントン政権のときにロビイストとランチを食べるときに「20ドルを超えてはいけない」というルールができた。それに習って各社も限度額を設定したのでしょう。そしてその額を超えてしまうと、ワイロとみなされる。「取材対象者からお金をもらった記者の記事は信用できない」ということに。

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