トイ・ストーリー3にあって、踊る大捜査線 THE MOVIE3にないもの(2/3 ページ)

» 2010年08月12日 14時29分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]

 そもそも、『踊る大捜査線』は、織田裕二扮する脱サラした警官=青島がサラリーマンとしての経験を生かして、警察の官僚的構造を事件の現場から突き動かしていくというところが主題であったはずだ。それが、シリーズ3では、木っ端みじんに吹っ飛んでいる。ファンの願う『踊る大捜査線』ではなく、良くも悪くもテレビ局がタレントの都合を優先してつくった映画にしかなっていない。

 『トイ・ストーリー』は、ピクサー社。『踊る大捜査線』は、フジテレビ。台所事情も、制作体制も違うから、比較しても無駄だとは思うが……もう少し、やりようがあるだろう。本質的に、何かを間違っている。

やるたびに成長する『トイ・ストーリー』

 『トイ・ストーリー3』は、好評である。どの掲示板を見ても、とても暖かいコメントが寄せられている。見て損はない。

 シリーズ3では、ウッディやバズライトイヤーのおもちゃの仲間とその所有者であるアンディの別れを描いているわけだが、その脚本の作り込み方、手抜きのない画質には、あいかわらず感服である。

 さらに、アンディとおもちゃ達との「別れ」は、我々ファンと『トイ・ストーリー』に出てくるキャラクターたちとの「別れ」も意味している。大人が、この映画をどう見れば良いか=大人としての成長を示唆してくれている良作である。映画の細部に至るまでが「誠実」なのである。

 『トイ・ストーリー』とともに、この映画ファンは成長するはずなんだ。同じ「時間」を共有しているはずなんだ。ということに答え続けている「誠実さ」に、胸が熱くなる。

 『トイ・ストーリー3』にあって『踊る大捜査線 THE MOVIE3』にないもの。それは、ファンに対する「誠実さ」である。

 前作からそれぞれ7年、10年という月日が経っていることへの謙虚さである。私たち、映画を見る側の者は、日々、出会いや別れを経験しながら成長している。10年前の『トイ・ストーリー2』を見ていた自分とは明らかに違う。7年前に、『踊る大捜査線 THE MOVIE2』を観ていた自分よりは、成長している。

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