朝日新聞が、世間の感覚とズレにズレている理由上杉隆の「ここまでしゃべっていいですか」(1)(3/3 ページ)

» 2010年08月11日 09時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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ノンフィクションライターの窪田順生氏

窪田:元老の山縣有朋が日露交渉に賛成する姿勢をみせたので、開戦論者の外務官僚からすればワラをもすがる思いで頼んだわけですよ。池辺主筆も期待に応え、「いまなさねばならぬのは、断じてこれを行うという決断です」と説得、山縣は頭を垂れて涙を流したと書いてあります(笑)。

 要するに、朝日新聞の役割というのは、取材よりも官僚の役にたって政治に働きかけることであるということです。なんせ……1ページ目から書いてあるくらいですから。

上杉:それって、自分たちがジャーナリストではなく、プレイヤーであることを宣言しているようなもの。

相場:じゃあ昔から、読売新聞社のナベツネ(渡辺恒雄)さんみたいな人がいたということですね。

窪田:ですね。事実、この逸話は「これ以降、日本の新聞界に近代的エディターとしての主筆が定着する」と誇らしげにしめくられています。やはり朝日新聞の感覚というのは、世間とズレていると思いました。

上杉:それは朝日新聞だけではないですよ。どこも同じようなもの。

 あとメディアには「愛社精神」というヘンなものがありますよね。「朝日人」とか。ちなみにボクがNHKにいたときには「NHKマン」だった(笑)。これってものすごく気持ち悪い。

窪田:気持ち悪いですね。それって昔の「オレは大蔵官僚だ」「ワシは通産官僚だ」といった感覚に近いのかもしれない。

上杉:また彼らは、家族で同じ寮に住んだりしている。そうすると考え方まで似通ってくる。

 →第2回へ続く

3人のプロフィール

上杉隆(うえすぎ・たかし)

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年からフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。著書に『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など多数。

相場英雄(あいば・ひでお)

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。2005年に『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)など多数。

窪田順生(くぼた・まさき)

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、フライデー、朝日新聞、実話紙などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍するほか、企業の報道対策アドバイザーも務める。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)などがある。


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