「秋田魂心会」に注目する! ご当地イベントの進化系相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年08月05日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 「わが町の名物を全国区に」「B級グルメで町おこしを」――。

 東京の繁華街で地方のアンテナショップが多数出店、ご当地グルメや名物のイベントなどを起爆剤に観光客を誘導しようと、全国の自治体が知恵を絞っているのは多くの読者がご存じだろう。ただ、多くの情報がはんらんする東京で、すべての試みが順調に運んでいるとは言い難い状況にある。こうした環境下、自発的に発生したご当地イベントが静かに注目を集め始めている。今回の時事日想は、東京在住の若き秋田県人が主催するイベントに触れてみる。

開かれた県人会

 「店長、そのTシャツカッコイイね。ところで『NDA』ってどういう意味?」

 「これはNDAではなく、『んだ』のこと。秋田弁で『そうだ』って意味です」

 これは筆者が頻繁に出没する新宿のバーでの一コマだ。

 黒地のTシャツに白く染め抜かれたNDAの文字。当初、軍隊の特殊部隊の頭文字かなにかだと筆者は予想していたのだが、意外な答えが返ってきた。

 この会話が、首都圏に住む秋田出身の若者たちが主催する「秋田魂心会(こんしんかい)」を知るきっかけとなった。懇親会ではなく、魂心会だ。故郷を遠く離れた東京で、同県出身者が旧交を温める目的で始まったが、最近はこれが秋田をアピールする有力イベントに育っているのだ。

 筆者は新潟県出身。出身高校の東京地区同窓会の案内をもらい、在京の新潟県人会への出席を促される機会があるのだが、多忙を理由に1回も顔を出したことがない不義理者だ。本音を言えば、この手の会合には苦手な先輩がいたり、県や市のお役人のお堅い話に付き合わされることを敬遠しているから。

 こんな筆者がなぜ「秋田魂心会」に関心を持ったかといえば、イベントが自発的に発生し、お堅い県の役人や地元経済界のヒモ付きでないところだったのだ。

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