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» 2010年08月04日 08時00分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:牛丼戦争どこ吹く風 神戸らんぷ亭の「牛丼3兄弟」戦略 (1/2)

果てしないチキンレース。もしくはノーガードの殴り合い。第3次牛丼戦争は、吉野家が仕掛けた牛丼並110円下げの270円に対し、松屋70円下げの 250円、すき家も30円下げの250円で応戦という構図になった。そんな中、小規模牛丼チェーンを展開している「神戸らんぷ亭」は全く独自の展開で生き残りを図っている。

[金森努,GLOBIS.JP]
GLOBIS.JP

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2010年7月30日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 神戸らんぷ亭は関東エリアで約40店舗を運営する牛丼チェーンだ。同社は1993年にダイエーグループの和食事業として設立され、1994年にチェーン展開を開始した。以後の価格の変遷が実に興味深い。

 当初、牛丼並290円でスタートしたものの、自社としての適正価格を探りながら数年後にはいったん当時の吉野家と同じ400円の価格に改定。その後、外食産業全体がデフレ景気による低価格競争に突入、同社も外食デフレ戦争に参戦し、2001年に270円の価格を打ち出している。一方、牛丼業界の転機であるBSE問題勃発に際し、2004年に豪州産牛肉に切り替えながら、価格を350円に値上げ。さらに2008年にメキシコ産を加えて380円に再値上げをしている(Wikipediaの記述を参考)。

 このように見ると、特に近年は牛肉の産地の変更に対応して細かな価格コントロールを行っているように見える。しかし、実は豪州産牛肉は米国産より一般に仕入れ値が安い。米国産にこだわる吉野家が苦境に立たされている原因としてはそれが大きいのだが、神戸らんぷ亭は米国から豪州に切り替えて値上げしている。つまり、値上げは仕入れ値の問題よりも、独自の価格維持戦略をとる「同社のポリシー」であると考えた方がいいだろう。

 2010年1月時点で松屋は全国776店舗。吉野家1176店舗に対し、現在の牛丼No.1であるすき家は1381店舗を展開している。まったく次元の違う牛丼3強チェーンと価格的に伍してして戦うには無理がある。圧倒的な規模の経済を生かした調達力、コストリーダーの座をかけた戦いに無理に参戦することは死を意味する。特にダイエーが2004年に産業再生機構の支援を受け、2005年に神戸らんぷ亭はIT企業に事業譲渡されるに至り、購買力は極端に低下したことが推測できる。独自の生き残り施策を展開せざるを得ない状況になったわけだ。

 規模が小さいことは購買力には劣るものの、悪いことばかりではない。小回りがきくことは最大のメリットだ。

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