コラム
» 2010年08月02日 00時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:政治や行政の失敗責任は誰がとるのか? (1/2)

メキシコ湾で海底油田から石油漏れというかつてない大事故を起こしたBPでは、その責任をとってトニー・ヘイワードCEOが辞任することになった。一方、日本の政治や行政を見てみると、失敗の代償を誰かが支払ったという例はそれほど見当たらないが、それは正しいことなのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 メキシコ湾で海底油田から石油漏れというかつてない大事故を起こしたBP。そのCEOであるトニー・ヘイワード氏が辞任することになった。「海の水の量に比べれば漏れた石油の量は大したものではない」とか「自分の生活を取り戻したい」などと発言して、米議会やアメリカ市民の怒りを買ったヘイワード氏だけに、1100万ポンド(約16億円)の年金を引き出す権利を得るなどの「厚遇」が明らかになるとたちまち非難の声が上がった。

 エコノミスト誌最新号でこの問題が取り上げられている。BPがイギリスの会社ということというわけではないが、エコノミスト誌はヘイワード氏にやや同情的である。株価が暴落したことによって、株関連の退職金はほとんど失っているから、それで「失敗の代償」は支払ったというような主張だ。

行政の失敗の代償

 「失敗の代償」というところでふと考えた。官僚がそうした代償を支払うことはほとんどない。行政の不作為によって損害を被った人が行政を訴えても、それが官僚個人にまで及ぶことはほとんどない。薬害エイズの事件では、厚生省の当時の課長が有罪になったが、このような刑事事件で訴えられること自体がまれである。

 問題なのは、被害者が特定できない場合である。言葉を換えて言えば、被害者が国民全体であるような政策の失敗に起因する損害は、賠償金などが支払われることがない。記憶しておられるだろうか。日本で初めて狂牛病が発生した時、農林水産省は国産牛肉をすべて買い上げて焼却処分をした(国産牛ではない牛肉を偽装して買い上げさせたという事件はその副産物である)。これによって生じた税負担は全部入れると1000億円を超えるとも言われた。

 日本にはなかった狂牛病が発生した原因は、欧州から肉骨粉を輸入し、それを飼料として利用したことにある。EU(欧州連合)から警告が出ていたにもかかわらず、農水省は輸入を推し進めた。そして「その結果」日本で狂牛病が発生し、多額の税金が消費された。この「被害者」は国民である。誰も代表訴訟を起こさなかったので、肉骨粉の輸入を許可した農水省の担当者は処分も何も受けなかった。

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